「エプロンをつけたお母さんが、八百屋でリンゴを五つ買いました」
皆さんはこの文章に違和感を覚えますか。
先日、小学生向けの問題の校正体験をする機会がありました。校正作業で気を付けることは、なんでしょうか。誤字脱字、事実関係。一見、この2つの観点で十分なように思いますが、それだけではないと言います。
「社会的配慮」。この要素も忘れてはならない重要な観点だそうです。
話を聞いて衝撃だったのは「エプロンをつけたお母さんが~」という言い回しが削除の対象だという事実です。ジェンダーの分野で挙げられる「性別役割分担意識」の問題です。この表現は、女性は家庭にいるものという思い込みを植え付けやすいのです。
「アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)」。日本では「無意識の偏った見方」と表現されます。私たちは知らず知らずのうちに自分が持つ価値観によって物事を判断しています。今回の表現について私は違和感を覚えませんでした。ですが、この違和感の無さもアンコンシャス・バイアスの一つなのかもしれません。
26日の日本経済新聞「男性の育児休業『取得したくない』38% 民間調査、消極的な傾向に」の中で、パソナグループの長畑久美子執行役員は「男性の育休取得を良しとしない組織風土や無意識の思い込みがあり、取りたくても取得できない人も多いと推察する」と話しています。
アンコンシャス・バイアスがあることが必ずしも悪というわけではありません。しかし時に、人を傷つけます。内閣府男女参画局の調査では、男性5452人、女性5384人の累計約1万1000人に対して「性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験」を41問の回答を通して尋ねたところ、最低1問「経験があると思う」「どちらかというと経験があると思う」と回答した割合は76.3%でした。自分の言葉が人を傷つけるきっかけとなっていないか、改めて考えなければなりません。
参考資料:
日本経済新聞電子版「男性の育児休業『取得したくない』38% 民間調査、消極的な傾向に」2023年9月26日 最終閲覧日:2023年9月28日
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74731340V20C23A9TEB000/
内閣府男女参画局「令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」 最終閲覧日:2023年9月28日
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/seibetsu_r04/02.pdf
内閣府男女参画局「UNCONCIOUS BIAS」 最終閲覧日:2023年9月28日https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/pdf/202105.pdf