先日、博多駅でこんな広告を目にしました。
えんじ色をしたコンテナの連なり。通常の列車よりも軽やかでリズムよく響く走行音。乗り物が大好きだった小学生のころ、駅や踏切で見かけるたびに喜んだことを思い出しました。
キットカットやネスカフェで知られるネスレ日本は、トラックドライバーの負担軽減や、二酸化炭素排出削減に貢献するために、JR貨物グループと連携してトラック輸送から貨物鉄道輸送への移行をさらに加速させると発表しました。地味な貨物鉄道輸送ですが、今後その立場は逆転するかもしれません。
■貨物鉄道の特徴
①遠くまで一度に大量に運べる
貨物列車26両が一度に輸送する貨物の量は、10トントラック65台分にもなります。
②時間通りに運べる
決められた走行速度で時刻表通りの正確な運行ができです。
③日本全国にあるネットワーク
コンテナを扱う貨物駅は全国に約140箇所あり、1日約500本の貨物列車が走っています。合計の走行距離はおよそ19万キロメートル、地球約5周分です。
④ニーズに合わせて便利に使える
コンテナ1つから片道での利用が可能です。冷蔵コンテナもあります。
⑤環境に優しい
鉄道は、様々な輸送機関の中で環境負荷が最も少ない輸送手段です。
■モーダルシフトの効果
モーダルシフトとは、トラックから貨物鉄道や船舶へ輸送手段を転換すること。JR貨物は、鉄道輸送の長所を生かし、モーダルシフトを推進しています。
その効果としては次のようなものがあります。
・先ほどの特徴と重複しますが、二酸化炭素排出量の削減に効果的です
この図で分かる通り、貨物鉄道輸送の輸送単位当たりの二酸化炭素排出量は営業用トラックの約11分の1となっています。
・トラックドライバー不足に対応
運転手不足で輸送能力低下が懸念される「2024年問題」を控え、トラック業界は代替輸送の確保を急いでいます。輸送の一部に鉄道を組み込むことで、ドライバー不足に対応できます。
・交通事故の心配が不要
貨物列車は線路上を走ります。危険品など高い安全性が求められる貨物の輸送に最適です。
■今後
持続可能な社会づくりと物流の効率化を進めていくために、ネスレ日本のようなモーダルシフトを進める企業は増えていくでしょう。
前回の記事では、ローソンの冷凍おにぎりから「2024年問題」について考えました。私たちの便利な生活は、物流によって保たれています。そのため、ドライバー不足や環境負荷の問題から目を逸らしてはいけません。トラック輸送と貨物鉄道輸送という従来のライバルが協力するように、新しい形の物流システムが求められています。
参考記事
・4日付 日本経済新聞 ネスレ日本、JR貨物グループとの連携によりトラック輸送から貨物鉄道輸送への移行をさらに加速 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
・6月20日付 読売新聞オンライン [JR考]第11部 貨物<3>「鉄・海・陸」協調 物流変える 「稼ぐ力」強化へ大型拠点 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
参考資料
・ネスレ日本企業サイト ネスレ日本、JR 貨物グループとの連携により トラック輸送から貨物鉄道輸送への移行をさらに加速