少子高齢化が進む日本。ついに昨年、18歳未満の子供のいる世帯数が1000万を下回ったことが厚生労働省の調査で明らかになりました。一方、65歳以上の高齢者がいる世帯の数は2747万4000と全体の50.6%を占めるなど、増加の一途を辿っています。
子どもを持つ障壁はなんなのか。日本財団が22年12月に18歳前後の若者1000人に調査したところ、最多の69%が「金銭的な負担」を挙げています。確かに21年現在での子育て世帯の平均所得は785万円で、全世帯の平均所得545.7万円を240万円ほど上回るなど、年収と子どもの有無には明らかな相関が見て取れます。
差額である240万円はどこに回っているのか。その一つが教育費でしょう。例えば、小中学校の受験者数は共に、少子化に関わらずここ数年上昇の一途を辿っています。首都圏模試センターの発表によれば、23年度における首都圏の私立・国立中学受験者数は5万2600名と過去最多を更新しており、首都圏では4.65人に1人が中学受験をしていることになるようです。
中学受験には多額の費用がかかります。文部科学省の調査によれば、中学受験を機に私立、つまり小学校だけ公立の人が大学卒業までにかかる養育費は1500万円ほどと試算されています。また、ベネッセの調査によると、私立中学校受験者は受験のための教育費に月6万円をかけており、4年生までに受験を決めている人が過半数を占めていると言います。このような事実を見ると、子供は高級品と言われることにも納得してしまいます。
一般的に、養育費の中で一番大きな比重を占めるのは教育費でしょう。そう考えると、子供を持つことへの一番のハードルである「金銭的な負担」とは、その不確実性から生まれる不安だとは言えないでしょうか。学費に関して言えば、全て国公立であれば約800万円で済む一方、全て私立だと約2200万円に上ります。費用の高さと同じくらい目に付くのは、1400万円に上る学費の落差です。これだけの違いに対応しようと思うと、それだけ生活に余裕を持つ必要性が出てきます。
それに対して今の日本は、景気の悪化で将来も見通せない中、子育てへの支援策も十分ではありません。政府の子育て支援の給付はどれも数万円の規模にとどまり、それ以上の支援は低所得世帯に限ったものが多いのが現状だからです。もちろんこれらの支援は必要不可欠で、これ自体を批判するつもりはありませんが、子育てを希望する人すべてが子供を持てる社会にするには、数十万円以上の給付や教育費の無償化といった大胆な支援策が必要なのでしょう。その非現実性を考えると暗澹たる気持ちになってしまいます。
このような高額化する教育費の現状を見ていると、「子どもの幸せを願った結果、産まない」という何とも皮肉めいた事態になっている気がしてなりません。政府も長年子育ての支援策を拡充するとは言っていますが、効果はどれも今一つです。少子化自体は避けられないにしても、子供を諦める社会にしないためにはどうすればいいのか。今後子どもを持つ可能性のある一人として、考えていきたいと思います。
参考記事:
・子育て世帯、22年に初の1000万割れ 経済不安が障壁に – 日本経済新聞 (nikkei.com)
・子育て世帯、所得は一般の1.4倍 世帯数初の1000万割れ – 日本経済新聞 (nikkei.com)
参考資料:
・2023年私立・国立中学受験者数は過去最多の52,600名、受験率も過去最高の17.86%に!《首都圏》|受験情報ブログ|首都圏模試センター (syutoken-mosi.co.jp)
・(1ページ目)私立小受験者は前年比約1割増 コロナで変わった「お受験」の中身とは? | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)