最近、新聞で「グローバルサウス」という言葉をよく目にするようになりました。グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカ、中南米の新興国・途上国全般のことを言い、具体的にはインドやインドネシア、エジプト、南アフリカ、ブラジルなどの国々を指します。国内総生産は著しく伸び、2050年には人口が世界の3分の2を占めるとの予測もあるグローバルサウスは、市場としても期待されています。
今年1月にインドがオンラインで開催した「グローバルサウスの声サミット」には125か国が参加しました。ロシアによるウクライナ侵略が長期化するなか、日米欧などの先進国がロシアへの経済制裁を強化する一方で、中立の立場をとって存在感を高めました。なかにはロシア寄り・支持に軸足を移した国もあります。これには、貿易や軍事面でロシアとの関係が深いことに加えて、西側への不満が大きくなっていることが理由として考えられます。
メキシコ人の友人とチャットした際に感じ取れたのは、米国への屈折した思いでした。メキシコ独立記念日には、米国の侵略の歴史を強調していた一方で、求職の話題に際しては「wetback(不法入国するメキシコ人を指す侮辱語)になろうかな」とジョークを飛ばしていました。西側により植民地にされた過去、そして現在もいまだ政治・経済において大きな力を握る西側に対する不満は、彼個人にとどまらずグローバルサウス全体でも共有されているように思われます。
今年6月にアフリカ東部のルワンダで「キガリ・グローバル・ダイアログ」という国際会議が開かれました。出席者のほとんどが、グローバルサウスの要人や識者で、西側への辛辣な本音が飛び交いました。いまの国際システムが米欧主導であり、自分たちの意見が十分に反映されていないといういら立ち、対ロシア制裁に伴い、自国経済の安定が脅かされているという危機感、シリアなどでは長年紛争が続いているのに、ウクライナほどには対処しないことに対する不信感が見られました。しかし、もっと根深く、深刻な問題はグローバルサウス内に過去の植民地支配への怒りや反発が渦巻いていることです。これに対し、中ロは反植民地主義のキャンペーンを強め、グローバルサウスを取り込もうとしています。しかし、サンクトペテルブルグでのロシア・アフリカ会議では、わずか17か国しか首脳を送っていません。
世界の不均衡は分断を生みかねません。今後世界の人口の3分の2を占めることになるグローバルサウスは、国連安全保障理事会の常任理事国枠を一つも持ちません。米欧主導の国際システムから、グローバルサウスとの対話を通じた新たな形を追求していかなければなりません。
参考記事:
8月7日付 [注目 キーワード]グローバル・サウス…新興国 国際社会で存在感 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)