今回、学生団体GEIL(ガイル)が主催する政策立案コンテスト「2days GAIL」(6/17~18)に参加しました。その様子を参加者の視点からお届けします。
◇「国立大学教員の研究時間の劣化を解消せよ!」
「学生のための政策立案コンテスト」は、6月17日、18日の1泊2日の日程で、国立オリンピックセンター(渋谷区)で開かれました。2日間を使い、与えられた課題に対する政策を考え、10分程度で発表するというもので、総勢35名が参加しました。
今回の課題は、「国立大学教員の研究時間の劣化を解消せよ」というものでした。科学技術分野において、日本にはかつてほどの勢いが見えません。例えば、論文数を各国別に比較すると、アメリカや中国が圧倒的であり、日本は大きく遅れをとっています。その原因として、大学教員が授業や雑務に追われて十分な研究時間を確保できず、研究成果が出にくいということが指摘されています。
政策立案チームは、参加者4人に、議論をサポートするCC(ケース・チェッカー)と呼ばれるスタッフ1人とチームを支えるCS(ケア・スタッフ)と呼ばれるスタッフ1人で構成されます。今回のイベントでは、10チームほどがそれぞれ政策をつくることになりました。
いざ課題を知らされても、大学教員が普段何をしているのかさえ知らず、専門知識ゼロの状態からのスタートでした。研究時間の確保を阻むものは何か、どうすれば確保できるのか、という二つの論点を軸に議論を進めましたが、原因を探るのは簡単ではありません。まして解決策となるとなおさらです。
そんな状況でも、一人一人の経験や知識を活用し、議論の方向性を固めていきました。最終的に、チームでまとまったのは、「サバティカル制度」を活用し、大学教員に研究時間を確保するということでした。研究休暇制度と言われるもので、大学教員は学校に籍を置きながら授業や校務、雑務などを、免除されます。一定期間、研究に専念できる利点があります。
◇そして発表へ
二日目は、政策案資料を作成しながら細かい箇所を詰め、発表となりました。発表時間は、10分ですが、審査員の方からの質問時間が8分あり、政策について議論する機会もありました。審査員は、経済産業省や財務省などの役所で活躍されている方や大学教授などで構成されていて、鋭く的を射た質問が数多くありました。
私のチームは、4年に一度、大学教員が校務から外れて、研究に専念することを提案しました。しかし、この制度を現行の状態で行うと、大学教員が不足してしまうことになります。そこで、若手の人材を大学に積極的に登用して不足分を補うことで、この状態を脱することができ、またその財源は「大学版ふるさと納税」で確保することが必要だということを指摘しました。
質問として、国として何ができるのかを聞かれました。政策というのは、あくまで国が主体として行うものであり、そして、そのツールは限られています。提案した制度を実現するには財源も権限も限られています。法律で定めることもできますが、それで全てうまくいくというわけでもありません。提案をいかに具体化していくのか、想像力を働かせて考えることが必要だと感じました。
◇主催者の声
主催者の一員として、CC(ケース・チェッカー)をした学生(中央大一年生)は、今回のコンテストを通じて、『ファシリテーションの技術を学びながら、どう参加者の力を引き出し、自由な議論へと誘い、楽しく議論させることができるかについては、かなり難儀した。夏のコンテストでは、参加者に「来てよかった」と思えるような経験を提供できたらと思っている』と話していました。
学生団体GEILの副代表である天本陸久さんにお話をお伺いしました。
―このコンテストを通じて、何を学生に得て欲しいですか
第一に、私たち学生自らが生身の人間との関わりの中で政策づくりを体験する機会(集団で議論することを指す)であり、第二に、そのような取り組みを実社会でしている方々と接する機会であり、第三に、公共的問題の解決に向けられた意志と志向を共有する同世代の学生が交流する場です。この機会の提供を通じて、参加学生は、第一に自分とは異なる意見に傾聴しながら社会課題を議論することで、相互啓発でき、第二にぼんやりとしていた課題意識をよりクリアにすることができるようになると思います。
―夏のコンテストに向けて、意気込みをお願いします。
夏は先に挙げた目的を最大限果たすためにも過去最大の140名の学生を受け入れ実施します。現在、7省庁が後援予定であり、総理を含め数多くの大臣、各大学の総長・学長からも応援を頂いています。1チーム5名28チームで深い議論を今回のコンテストの4倍以上の時間をかけて議論できます。夏の貴重な8日間をGEILに投じてくれる学生の皆様のためにも、我々運営メンバーは他では得られない貴重な体験を提供できるよう邁進いたします。
《第25回 学生のための政策立案コンテスト詳細》
特設サイト:https://waavgeil.jp/25th2023-contest/
[主催]:学生団体GEIL
[後援]:内閣府・財務省・経済産業省・厚生労働省・環境省・文部科学省・デジタル庁・国立大学法人 一橋大学・国立研究開発法人 科学技術振興機構・公益社団法人 日本医師会・一般社団法人 次世代社会研究機構・株式会社 日本経済新聞社・株式会社 Basis Consulting
[参加費]:22,000円(関東圏以外から場合は、移動費を鑑み17,000円)
[優勝]:20万円の賞金および、関連省庁への政策提言権
[参加人数]:120~140名、1チーム5名(予定)