上京して驚いたことの一つにエキナカが充実していることが挙げられます。宮崎県にある地元の駅はKioskさえ撤退し、閑散とした雰囲気が漂っていました。都内に住んでから多くの駅を利用しましたが、飲食店やコンビニエンスストアが入っているのはもちろん、ターミナル駅には書店や雑貨店まであります。駅構内だけで1日過ごせるのではないかと思うほどです。
JR東日本はさらなるエキナカの発展を目指しているようです。15日付の日経新聞朝刊によると、22年4月に西国分寺駅の中央線上り方面ホームに対面とオンラインの診察を組み合わせたハイブリッド診療所を開設したそうです。内科は対面診察で、皮膚科、耳鼻咽喉科、婦人科はオンライン診察で対応しています。診察時間は午前8時から午後8時までと一般的な診療所より長くなっています。これは通勤・通学時や帰宅時に気軽に利用できる配慮が施されているのでしょう。駅構内に診療所があれば多忙な社会人でも診察を受けるハードルが低くなります。
23年度には複数の駅で新しい診療所を開設する予定だそうです。体調が悪い時は病院へ行くのも億劫になってしまいます。付き添ってくれる人がいない独居高齢者にとって、この問題はより深刻さを増します。駅構内の診療所なら自宅の最寄り駅から電車に乗りさえすれば到着するので、診察を受けたいけれども遠出はできない高齢者の頼みの綱となるかもしれません。
21年の国土交通白書では50年に全市町村の66%で病院の存続が困難になると試算しています。現代は人口減少に歯止めがかけられず、インフラの縮小も避けられません。オンライン診療であれば有人よりも維持管理費用がかからないので、医療機関の撤退を食い止めることができます。
また、過疎地域は赤字ローカル線問題も内包しています。駅構内の診療所の設置など駅自体の魅力が高まれば赤字率も減少するでしょう。JR東日本の22年度の定期券の運輸収入は18年度比で8割にとどまりました。鉄道業界はもはや輸送のみでは採算が取れない状況にあります。沿線人口を増やすような暮らしに密着したサービスを提供しなければ競争に勝てなくなっていくのでしょう。今後の駅構内の発展に注目していきたいです。
参考記事
14日付 日経新聞朝刊 14面