春といえば、新しい教科書の季節。両手に抱えたときのずっしりとした重さと、軽やかにはずむ心。大学生になったいまでは、授業に必要な教材は数えるほど。積み上げた教科書を見て、やる気に燃えた小中学生のころが懐かしいです。
やはり教科書は心踊るものであってほしいし、信頼できるものであってほしい。でも、なんだか嫌なニュースを目にすることも。たとえば、2021年度の「教科書採択」での、大阪・藤井寺市の汚職事件です。20年4~7月、「大日本図書」(東京)の教科書を候補にする代わりに、元中学校長が元役員らから現金を受け取るという犯罪が摘発されました。
教科書採択 :学校で使う教科書が指定されること。小中学校の場合は、原則4年ごとに、学校を設置する自治体の教育委員会が決定する。「一度採択されると4年間安定した売り上げが見込めるため、競争が激化しやすい」ことが問題となっている。
(参考・出典:文部科学省公式サイト、読売新聞オンライン)
本日付の読売新聞には、23年度の教科書採択に向け、文部科学省が「公正確保の徹底」を求める通知を出した記事がありました。作り手の姿勢は、教材への信頼にもつながります。問題となった会社だけでなく、業界全体として信用の回復に努めてほしいものです。
教科書選びだけでなく、内容の確かさが疑われるニュースも目にします。2月には、最大手「東京書籍」(東京)が発行した高校地図の教科書に、約1200カ所の訂正があったと読売新聞が報じました。それなのに文科省の「教科書検定」に合格していたことも問題視されています。
教科書検定 :教科書会社が編集した図書の内容を文部科学省が審査し、合格したものを教科書として認める制度。「学習指導要領や、同省の検定基準に沿っているか、内容の正確性などをみる」。
(参考・出典:文部科学省公式サイト、読売新聞オンライン)
文科省は28日、24年春から使われる小学校と高校の教科書の検定結果を公表しました。全国の小中学生に1人1台の学習用端末が配布されたことを背景に、教材もデジタルとの連携が進んでいるそうです。
大人になったいまは、教科書を作ってくれている人たちの顔も、なんだか見える気がします。だからこそ、業界の人たちを応援しています。どれだけがんばって作っても、完璧な教科書なんて存在しません。でも、目に見える課題を丁寧に解決することはできるはず。「校正」を重ね「公正」に選ばれた教科書が、子どもたちのもとに届くように願います。
参考記事:
1日付 読売新聞朝刊(14版)30面「教科書採択 公正確保を」
参考資料:
2022年11月2日付 読売新聞オンライン
「教科書選定に便宜、元校長を加重収賄容疑で書類送検…『大日本図書』側から現金・接待」
2月18日付 読売新聞オンライン
「東京書籍の高校地図教科書に訂正1200か所、文科省検定には合格…異例の再配布」