イギリス・ロンドン西部にあるコンタクトレスの小売店アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)を訪れた。レジ待ちによるイライラは、長年のあいだ顧客にとって深刻な問題であった。アマゾンは、2018年1月、シアトルに「アマゾン・ゴー」1号店をオープンした後、その店舗数をさらに拡大させ、ロンドンにも同様の店「アマゾン・フレッシュ」を開店した。
まず、Amazonのアカウントに登録が済んでいる必要がある。登録が既にされている方は、カメラから店舗にあるQRコードを読み込む。すると入店するためのQRコードが表示され、それを入口のゲートのスキャナーにかざして入店ができる。2人で訪れた場合も、片方がQRコードを持っていれば、入店することが可能である。
店舗の中は、普通のスーパーマーケットと何ら変わらなかった。あとは、品物を袋に入れて店を去るだけである。あまりにもあっさりとしすぎていて、「本当にこのまま帰って大丈夫なの?」と心配になるほどであった。「モノを買ったらレジに並んでお金を払うのが当たり前」という習慣で生きてきた人からすると、なんとなく悪いことをしているような気分になるのも仕方がない。まさに小売りの常識を翻す革新だった。
筆者は、AIの技術に感動を隠せなかった。例えば、AさんがQRコードを表示して入店し、Bさんは自身でQRを持っておらず、Aさんの付き添いとして入店したとする。品物を持って改札を出るのがQRを持っていないBさんであったとしても、Aさんのスマホから決済がされる。カメラが通路を移動するお客さんを、商品が並ぶ棚に埋め込まれた重量センサーが商品を追跡しているのである。
■1回目のハードルをどう乗り越えるか
では、店舗の革命ともいえるこの画期的なサービスに課題はないのか。筆者が利用してみて唯一気がかりだった点は、入店にQRコードを用意するまでの手間であった。2回目以降の顧客からすれば全く問題ないのだろうが、初めて利用する顧客にとっては、どうやってQRコードを入手することができるのかを理解するのに少し手間がかかってしまう。筆者の友人は、アマゾンのアカウントを持っていなかったために、アプリを登録して入店するまでに30分以上の時間を要した。
デジタルに馴染みのないお年寄り層であれば、さらに時間がかかるかもしれない。店の中は完全に無人ではなく、スタッフが1人ついて最初の操作のやり方を説明してくれた。しかしそれでも、登録が必要だと分かってから諦めて帰ってしまった女性もいた。入り口の障壁さえクリアすることができれば、その後は簡単だ。むしろ一度慣れてしまいさえすれば、「レジありの生活なんて耐えられない!」と言う友人もいる。スマホが普及し始めた頃、かたくなにスマホを使わない人々が一定数いたように、なにか新しいことを始めるとき、最初は誰でも抵抗がある。1回目までの導線をどう引くかが重要になってくるだろう。
参考記事:
2022年11月25日「世界の小売り「レジ待ちなし」競争 無人決済が実用期に」