昨年10月〜12月期の決算発表 続々と

上場企業の多くが、昨年10月〜12月期の決算を発表しています。この四半期は、ドル円の為替レートが151円台をピークにして、円高が進みました。政府と日銀の市場介入に加えて、米消費者物価指数(CPI)の発表によってインフレの鈍化が明らかになり、年末までに130円近くまで下落。中国ではコロナ対策が緩和された一方、感染者が急増しサプライチェーンが乱れ始めた時期に該当します。目まぐるしく変化する世界経済の中で、日本企業は業績を伸ばせたのでしょうか。

2月11日の日経新聞の投資情報面によると、3月期決算企業の純利益は前年同期比で25%減だったそうです。利益減の原因は業種や企業によって異なりますが、主に製造業が需要減退に直面している模様です。原料費や電気代などのコスト増で、業績を落とした企業もあります。個別に詳しく見ていきます。

まず、純利益を伸ばした企業としては川崎重工業三井不動産ヤクルトが紹介されていました。川重の純利益を4.3倍増の見通しに押し上げたのは「パワースポーツ&エンジン部門」。先進国向け、新興国向け両方において、二輪車・四輪車の売上高が伸びました。前年同期と比べると利益増の主な要因は為替変動によるものですが、長期推移を参照すると、売上高を着実に伸ばしながら利益率を改善させていることが窺えます。三井不動産は賃貸・分譲事業に加え、施設営業での利益増が目立ちます。コロナ禍が落ち着いたことで、ホテル等の稼働率が上がったものと推察されます。過去最高益に向けて順調です。ヤクルトは国内飲料が伸びていますが、円安による恩恵も大きい印象でした。

紙面では、全体的に「増」より「減」の文字が目立ちました。五洋建設エネオス資生堂などです。五洋はシンガポールや香港の工事などで、約160億円の損失を計上。受注高は昨年同期比で倍増しており、今後は売上高の上昇が期待できそうです。エネオスは石油・天然ガスの開発事業で増益したものの、油価の下落や製油所のトラブルで大幅減益となりました。資生堂は事業譲渡に伴う売却損に加えて、コロナ禍の影響で中国市場の不調が響きました。中国の市場成長率が落ち着いてくる中で、中長期的な戦略の見直しが求められます。

以上のように、昨年10月〜12月期の決算発表において驚くような発表はなく、大筋予想通りの結果となりました。大半の業種で為替の影響が目立った印象です。日経平均株価や東証株価指数TOPIXは2月10日の午前中こそ上昇したものの、午後下落して、結果的に大きな変動はありませんでした。

多くの企業は残り3ヶ月で追い込みをかけて、業績向上を目指します。世界経済がなかなか安定せず、苦しいところはありますが、国内のコロナ禍は落ち着いていますし、長期的な利益増を見据えつつ頑張って欲しいものです。

東京証券取引所(2022年5月筆者撮影)