VR映像って、〇〇に使えるのでは?

春の陽気を感じた2月7日、筆者は東京都府中市の広場で歴史のVR体験をしてきました。JR武蔵野線府中本町駅から徒歩30秒程のところにある広場で常時行われています。内容は史跡が発掘された5カ所のポイントをまわりながら、VRゴーグルで当時の映像を体験するというもの。所要時間は1215分程で、音声ガイドに従いながら奈良時代の様子や江戸時代の様子を体感できます。

 

広場入り口にあるVR体験の宣伝。映像の一部が写真でも紹介されている。

特に印象に残っているのは江戸時代の鷹狩の様子。この広場で江戸時代の建物である府中御殿が発見されているためです。家康は鷹狩りをする際にこの御殿に滞在していました。ゴーグルに合わせて身体を動かすと足元にかわいいうさぎが。鷹の餌になってしまうため急いで走り出しました。他にも万葉集を詠みあげる歌会の映像では、役人たちとともに宴会に参加。下を向くと豪華な料理が目に入ります。いずれも360度で体験するVRならではの臨場感溢れる映像でした。

体験を終えて3日たった今改めて感じる驚きは、記憶が非常に鮮明な点です。普段から郷土博物館に足を運ぶ筆者ですが、VRの体験を通して説明を受けた方が記憶への定着率が格段に良かったです。個人の感覚ではありますが、実際に自分が経験したことを自然に思い出す時と同じ感覚です。これは、観光や娯楽のみならず学校での社会科や古文の学習などにも役立つ技術ではないでしょうか。

思えば社会科を「暗記ばかり」「単語を見たところで想像がつかない」と語る人が多数でした。実際にその中身を想像する機会は授業内ではほとんど設けられておらず、日本史の勉強では語呂合わせにいそしむ人ばかりでした。VRは臨場感のある映像をつくりやすいため、好奇心を刺激する教材になり得る要素を持っています。暗記科目としての認識を払拭するきっかけとなり、自然な習得を促せるのではないか。そう感じました。

さらに、こうした体験型の技術を教育現場に導入することで、学習方法の選択肢も増えるのではないでしょうか。周囲では「文字を認識することが苦手で学校の授業が嫌いだが、聴いて覚えることは得意だ」という人が多々見受けられました。読む。書く。学校では、この方法が主体です。たまたま学校の方法に適していた人々は疑問を抱きませんが、勉強に苦手意識を持っていた人は知識偏重な授業に顕著にあらわれる「読み書きばかりの学習」に苦言を呈していました。

対してVR映像は五感を刺激する方法。もしも導入されれば、勉強が苦手だったわけではなく、文字を読み、書いて覚える学校教育の方法があわなかっただけの子供が成績を向上させるきっかけになるかもしれません。技術の進歩は、「できること」を増やすだけでなく、「できない」とされてきた人たちへの見方を変える力も持っているのではないでしょうか。

実際にVR映像とは異なりますが、タブレット学習を活用することで学習障害を持つ学生が難関校に進学を果たした事例が見受けられます。ルールに縛られず、使える道具を教育現場で活用することは、生徒の可能性を引き出すきっかけになります。

GIGAスクール構想でタブレットの普及が広がった今、VR映像等を授業の補助道具の一部として活用できないでしょうか。筆者は体験を通じ、技術と教育の融合によって学習方法の多様性は実現できるのではないか、と淡い期待を募らせました。このように考えるのは筆者だけでしょうか。皆さんは、どう思いますか。

筆者が使用したVRゴーグル。耳掛け式のイヤホンがついており、快適に使用できた。

【参考記事】

朝日新聞デジタル 1月31日「ホテルの接客、VRで体験 専門学校が研修用の教材開発」

【参考文献】

国史跡 武蔵国府跡 国司館地区〜国司館と家康御殿史跡広場〜 国司館と家康御殿VR復元

府中市観光HP 「国史跡 武蔵国府跡 国司館と家康御殿史跡広場」

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