川崎市の有料老人ホームで3人の入居者が転落死した事件。元職員が1件目についての殺人容疑で逮捕されて1週間経ちました。この老人ホームでは転落死のほか、同じ男性による窃盗や他の職員らによる虐待も発覚しています。そもそも施設自体の管理体制はどうなっていたのか。再発防止のために、運営・管理のあり方の見直しが必要です。また、最初の転落死は2014年。その時に事件と判断ができなかったのか、警察の初動捜査には問題がなかったのか、を検証することも大切です。
供述により、分刻みのスケジュールに追われ、入浴の介助で困っているなど仕事への不満が動機として浮かんできています。こうした現場の思いは多くの高齢者施設で見られるでしょう。一施設の問題ではなく、国や自治体などで共有して介護現場の議論につなげるべきだと思います。
再発防止の仕組みづくりとして「スタッフ同士が悩みを分かち合い、相談できる関係づくり」がよく挙げられます。今回は悩みを打ち明けることについて考えたいと思います。
現在、私の属しているボランティア活動では人手不足の問題を抱えています。一人の人に負担がかかります。ボランティア以外にもアルバイト、インターンと忙しい。でも行かなくちゃ、やらなきゃ。何かが崩れそうになり泣きたくなる時があります。このままだとボランティアを続けるのが厳しいかもしれないと思いました。
「誰かに相談すればいいじゃん」。簡単にいうけれど、そもそも人に自分の弱い部分を見せるのが苦手なので、悩みを誰かに伝えることすら一苦労なのです。いざ相談したいという時に、誰に持ちかけたらいいのかわからなくて途方にくれます。容疑者も弱さを見せるのが苦手だったり、相談することに自体に悩んでいたりしたのではないか。そう思ってしまいます。私はある先輩に相談しました。ためらっていましたが、打ち明けてよかったと思っています。
人手不足が懸念される現場ではお互いが余裕のない状況で働いています。「スタッフ同士が悩みを分かち合い、相談できる関係づくり」には時間がかかるでしょう。当然ながら、そもそも悩みの種を作らないような労働条件の改善も必要です。でも、率直に相談できる窓口があるといいのかもしれません。
参考記事:22日付 朝日新聞東京14版 社会35面 「介護の仕事に不満 動機か」