稽古不足を幕は待たない

第88回選抜高校野球の出場校が29日、毎日新聞大阪本社で開かれた選考委員会で決まりました。春連覇を狙う敦賀気比高校や第1回の優勝校であり、晩秋の明治神宮大会を制した高松商業高校が一般選考で選ばれました。

日本経済新聞では初の甲子園となる小豆島高校の部員。朝日新聞では帽子を投げて喜ぶ選抜11年ぶりの青森山田高校の選手、3年連続出場の八戸学院光星高校の球児たちの写真が掲載されていました。喜びがどの写真からも伝わります。

話が変わりますが日本経済新聞の名物コラム「私の履歴書」。毎月1人を取り上げ、ほぼ1カ月間、自伝を紹介しています。今月は小椋佳さん。実は私が以前住んでいた近くの小学校の校歌を作詞・作曲をしていました。自分の思っていた校歌とは違い、窓から聞こえてくる明るくのびやかなメロディーが大好きでした。そういったご縁もあり、毎日、このコラムを楽しみにしていました。

小椋さんの基本姿勢は、自分の日記から言葉を拾い出し音に乗せること。歌詞の嘘臭さを嫌いました。この姿勢がいつまでも愛される曲作りに通じているのでしょう。東京大学に在学中に知人と会社を設立。また、社会に出てからは銀行員としても活躍されていました。二足のわらじで毎年曲を100曲以上書き、支店長も務めました。退職後は音楽活動に専念されています。

私は小椋さんが作詞作曲した『夢芝居』が好きです。梅沢富美男さんが歌っています。「稽古不足を幕は待たない」というフレーズが気に入っています。きっとこれは日記から拾い出したもので、自分自身に「二足のわらじでどんなに多忙でも練習不足を言い訳にしないで努力しよう」と言い聞かせていたのでしょう。

少し逸れてしまいましたが、野球の話題に戻ります。高校球児たちも「稽古不足を幕は待たない」と練習を重ねているのだと思いました。読売新聞には選抜切符をつかみ、喜びあう釜石高校野球部の選手の写真があります。東日本大震災で被災した仲間もいる野球部です。グラウンドを六つの部活で共有するなど決して恵まれているとはいえません。練習を「試合」と位置づけ集中力を高めているそうです。

どんな結果であれ勝負は一度きり。大会のある3月20日から3月31日までの12日間、どの選手にも頑張ってもらいたいものです。

参考記事:30日朝日新聞(東京14版)21面 「僕らが春を熱くする」

30日日本経済新聞(東京14版)40面「センバツ出場32校決定」

30日読売新聞(東京13版)25面「釜石 センバツ切符」

1月1日から連載 日本経済新聞「私の履歴書 小椋佳」