菓子折りと一緒に入った50万円、これが政治家の美学ですか

菓子折りと一緒に入っていたのし袋の中には50万円。ドラマの世界だけだと思っていたこの光景。実際にあるのかと驚きました。

昨日28日、甘利明経済再生相は、週刊文春で報じられた現金授受疑惑を受け、閣僚を辞任しました。アベノミクスやTPP大筋合意に尽力してきた存在だけに、政界には大きな衝撃が走りました。

まずは週刊文春で報じられた疑惑を整理します。甘利氏は大臣室で現金50万円を2回にわたって受け取りました。金を渡した建設会社側は、都市再生機構(UR)とのトラブルについて口利きを依頼したといいます。また、秘書は地元事務所で建設会社の総務担当者から、口利きの見返りとして現金500万円を受け取ったとあります。

この500万円のうち300万円は政治資金収支報告書に記載されていません。その後の秘書らへの資金提供や接待は1200万円にのぼるとしています。この報道に対して、甘利氏は「調査した上で説明責任を果たしたい」と強調し、安倍首相も「説明責任を果たしていただけるものと考える。重要な職務に引き続き邁進してもらいたい」と述べていました。

最初の報道から1週間。やっと開かれた記者会見で、甘利氏は主に自らの疑惑について説明しました。会見中継や報道を見て、筆者が「おかしい」と思うことについて考えていきます。

冒頭にも書きましたが、菓子折りが入った紙袋の中に50万円が入っていたことです。大臣室で建設会社社長と面会し、先方が帰ったあとで秘書から現金の存在を伝えられたと言います。甘利氏は「政治活動への応援の趣旨だと思い、受け取った。秘書に適切に処理するように指示した」そうです。しかし、一般の感覚からすれば、50万円の趣旨を勝手に解釈し、そのまま黙って受け取ってしまうことが、適切に処理したということではないでしょう。

疑惑が報じられてから1週間もの間、説明がなされなかったことも疑問に思います。「調査をした上で」と言い、会見では東京地検特捜部の検事出身の弁護士による報告書を読み上げました。検証や確認が必要だったとはいえ、記憶が薄れている部分が多いという釈明からは、こうした金銭の授受が日常化しているのではないかと勘ぐりたくなります。

甘利氏と秘書の距離の遠さにも違和感を覚えます。口利きの見返りに秘書が受け取ったとされる500万円について、甘利氏は知らなかったと述べました。口利きの存在は別として、大金を受け取ったことも、何に使ったかもわからないようなコミュニケーションしかなかったのでしょうか。秘書の独断で処理された300万円は政治資金規正法に抵触する可能性もあります。「なぜ秘書は、自分に報告相談をしてくれなかったのか、忙しすぎて地元に目が向かなかったことが原因」と、自身の責任についても会見で触れました。

一連の報道については、別の側面から疑問を感じる方も多いでしょう。金銭を渡したとする人物は実名を出し、やりとりの録音や写真、毎回の記録も残しています。金銭授受に問題はありますが、自民党の高村正彦副総裁が「わなを仕掛けられた感がある」と述べたのも単なる仲間内の庇い立てとは思えません。問題の裏に別の影があるのでしょうか。

口利きや接待についてはまだ明らかになっていません。弁護士が調査を続けるとのことです。閣僚の辞任でこの問題を幕引きにしてはならないでしょう。「普通の感覚」からの疑問は解消されていませんから。国会の論議で「政治とカネ」の本質に迫らなくてはなりません。そして、今回の「告発」の舞台裏も明らかにしてもらいたものです。

参考記事:

29日 各紙朝刊 「甘利経済再生相が辞任」関連面