兵庫県豊岡市にある城崎温泉。川沿いに並ぶ柳や土産物店が印象的な温泉街です。そこに「日帰り出張」をしたとして、政務活動費をだまし取っていた元兵庫県議、野々村被告。神戸地裁は昨日、初公判に強制的に出廷させるため「勾引状」に基づき、身柄を拘束しました。
起訴内容によると、野々村被告は2011~13年度に受領した政務活動費をめぐって日帰り出張344回分のほか、はがき・切手代など架空の内容を記した証明書や領収書を偽造していました。それを収支報告書に添付して県議会に提出し、913万円を詐取したとされています。「号泣会見」で話題となったり、昨年11月に予定されていた初公判を「精神的に不安定」(弁護人)との理由で欠席したりと事件発覚後の行動が注目されていました。今回、発付された「勾引状」。刑事訴訟法で、被告が正当な理由なく呼び出しに応じなかったり、その恐れがあったりする場合に裁判所が出廷させるため発付できると決められています。
なぜ、そこまで公の場に姿を表すことをためらっていたのでしょうか。弁護人は「マスコミ関係者と鉢合わせし、精神的にパニックになった」などと説明しています。今回も「マスコミがつきまとうので出られない」と不安を話しているようです。
納得いく理由でないことは明らかです。一度「公」の人間になったのであれば、マスコミ関係者が自身の行動や発言を注視するのは当然です。民意を代表して政治に携わる立場にあった人物の発言とは思えません。度々、「メディアスクラム」も問題になりますが、今回は被告がまるで「報道陣のせい」にしているように思えてなりませんでした。報道機関は、公人の問題を追及するのが仕事です。
野々村被告の初公判はきょう午前中に行われ、被告は起訴内容を否認しました。「虚偽の収支報告書を提出して返還を免れようとしたことは決してありません。結果として誤ったかもしれないが、一つひとつの記憶がございません」。そう話しています。
一連の行動、発言。「責任感」が全く感じられないと思うのは筆者だけではないはずです。求められているのは、誰かのせいにして、記憶がないといいわけすることではなく、きちんと「事実」を説明すること。兵庫県民だけでなく、日本中から今後の被告の言動は注目されています。
参考記事:
26日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)37面(社会)「野々村被告の身柄拘束 神戸地裁きょう強制出廷へ」
同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)36面(社会)「野々村被告の身柄拘束 神戸地裁きょう初公判、強制出廷」
同日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)39面(社会)「野々村元県議を拘束 政務費詐取 きょう公判、強制出廷」
同日付 朝日新聞デジタル(12時22分)「元県議の野々村被告、起訴内容を否認 強制出廷で初公判」