“おてつたび”してみませんか? (甑島滞在記・前編) 

筆者は今、「おてつたび」というサイトを通じて、鹿児島県にある甑島(こしきしま)という離島にアルバイトに来ています(8/19~8/31)。今回は、その旅について、2部構成で紹介したいと思います。前編では主に、おてつたびの仕組みについて、後編は甑島についてレポートする予定です。

(今回の旅行に際し、渡航前に1週間ほど不要不急の外出を控える期間を設けたほか、抗原検査で陰性を確認するなど、自分なりに感染対策をしたつもりです。記事をご覧の皆様も、旅行の際は感染対策にお気を付けください。)

 

■甑島について

まず、甑島について簡単に紹介します。

鹿児島県薩摩半島から西へ約30キロほどに位置している離島で、上甑島、中甑島、下甑島の三つが縦に連なって出来ています。一昨年に完成した甑大橋によって中甑島と下甑島が繋がり、今では三つの島が橋によって繋がっています。列島全体の長さは38キロメートルほどあり、離島とは言えど、見どころは満載です。(詳しくは後編にて)

 

■おてつたびについて

おてつたびとは、その名の通り、「お手伝い」と「旅」を掛け合わせたものです。

「お手伝いをしながら、知らない地域を旅する」をコンセプトに、人手不足に悩む地域と、時間に余裕がある若者を中心とした地方で働くことに興味を持っている人をマッチングするサービスを提供しています。双方のニーズを満たすと共に、その地域について知ってもらうことで魅力を伝え、地元の活性化に繋げて行こうという狙いです。

おてつたびの仕事で給料は払われます。移動費や食事代等は自己負担ですが、宿泊先は用意してくれるため、滞在費用は抑えられます。なので、稼ぐことには向いていませんが、旅の費用を抑えるにはもってこいというわけです。「地方に稼ぎに出る」のではなく、「旅費を抑えて旅をする」のです。国内版ワーキングホリデーといったところでしょうか。

 

今までに何度もテレビを始めとした各種メディアに取り上げられており、年々その知名度もあがっています。私も、2021年12月放送のテレビ東京「ガイヤの夜明け」という番組でこの存在知りました。その甲斐もあってか、おてつたび先は段々と増えているようです。

おてつたびのサイトより。 2022年8月27日現在では、翌月の9月分だけで30件ほどの募集が出ていました。9月に入れば更に増えることが予想されます。

 

HPの募集一覧を見ると、そのほとんどが旅館や農家からです。「地方だから人手が集まらない」「夏休みなど、観光客が増える時期に増えるお客に対応したい」などといった理由で、おてつたびのサービスを利用しているようです。私は、上甑島の里町というところにある旅館「石原荘」で働かせてもらっていますが、ここでも地元で募集しても人が集まらずに悩んでいたことから、このサービスを紹介してもらったそうです。

今回は募集人数が一人だったので筆者だけですが、複数人の募集もあります。友人同士で参加することも可能なので、挑戦もしやすいのではないでしょうか。

 

■筆者のおてつたびについて

筆者は、これが初めてのおてつたびです。清掃と夕飯の配膳をお手伝いしています。お休みの日以外、滞在中は下記のようなスケジュールで働いていました。

 

朝8時に起床。

8時半~12時まで清掃のお手伝い。

12時~18時まで休憩。

18時~20時半まで、配膳や食器洗いのおてつだい。

その後は、宿のお風呂を借りると共に、用意していただいた賄いを食べ、就寝。

 

部屋は、長期のお客様用の一室を用意していただきました。また、休憩時間が6時間もあるので、町を散歩したり、海沿いをサイクリングしたり、新しいお店を開拓したりと、観光をして過ごしています。宿の大将の運転で、島を巡ってもらったこともありました。

今回の時給は850円と決して高いわけではなく、労働時間も5~6時間なので、稼げる金額は多くても日に5000円ほどです。先に述べた通り、そこまでの交通費や、日々の食事代は自己負担ということを考えれば、実入りはそれほど多くないと言って良いでしょう。

ただ、その一方で、無料の宿泊先が用意されるうえ、場所によっては賄いが出たり、食材を提供してくれたりするので、滞在費用はかなり抑えられます。筆者も、夜はほぼ毎日賄いをいただいています。実際に今回の収支を計算してみると、飛行機代などの移動費や食費代を含めた全ての支出をアルバイト代で賄うことが出来ました。

 

■参加してみて

今回、参加してよかったと思ったところが二つあります。一つは、自分では思いもしないような地域、場所に旅をするきっかけになったことです。東京近郊から鹿児島の離島に来ることなど、こういった機会が無ければあり得なかったと思います。旅と聞くと、なんとなく大変そうでハードルが高いと思いますが、宿の用意があるので、知らない場所での生活も長期滞在もしやすいと思います。

もう一つは地域の人との交流の場を自然に持てることです。以前に一度瀬戸内海周辺で一人旅をしたのですが、その際はあくまでも観光客として一時的な滞在しかできず、旅先での交流が難しかった記憶があります。しかし今回は、費用を気にせず長期間の滞在ができるほか、おてつたび先から地域のコミュニティに入っていくことができたので、知り合いのつながりが広がりました。宿の方とはもちろん、宿の常連のお客様や、何度か食べに行ったお店の店員さんなどとも話をさせていただけたので、その地域についてより深く知ることが出来たと思います。特に石原荘の従業員の方々には、本当に良くしてもらっており、毎日楽しく過ごすことが出来ています。

一方で、応募した学生を単なる都合の良い労働力として扱うなど、制度の趣旨に反する宿も中にはあるようです。そういった場所を避けられるように専用サイトには前に行った人のレビューが確認できる機能があり、5段階評価とコメントを見ることが出来ます。興味を持たれた方は、そちらをしっかりと参照することをお勧めします。

おてつたびサイトより。 個人名なしに、性別と年齢のみでレビューすることが出来るので、感想に信頼が置けると感じた。

 

後編は、9月に投稿します。甑島の魅力や観光名所、そしてコロナ禍の影響などについて報告する予定です。

 

参考記事:

2022年8月27日 朝日新聞デジタル「旅するZ世代が農家のピンチを救う リンゴを収穫、SNS投稿でPR」

2022年5月7日 日経電子版 「手伝い旅」がZ世代に人気 一週間の予定がプチ移住も」

参考資料:

おてつたび|お手伝いをしながら、知らない地域を旅する (otetsutabi.com)

甑島とは。 – こしきしま観光局 (satsumasendai.gr.jp)