運行会社の怠慢を糾弾する 軽井沢バス事故

14日の軽井沢スキーバス事故。大型バスは無残な姿で崖下に投げ出されていました。発生から4日。バス運行会社のずさんな管理体制が次々と明らかになっています。

まず、運賃基準の違反。道路運送法では、安全確保のため往復バスの運賃下限が定められています。下限額は走行時間や距離によって変わります。今回は26万4千円。しかし、バス運行会社「イーエスピー」(東京・羽村市)とツアー会社「キースツアー」(東京・渋谷)の間では、19万円で契約が締結されていました。下限額を約7万円下回っています。それに関連してか、バスは本来通るはずのない一般道を使っていました。運行会社の高橋美作社長はこう説明します。

「当初は客が少なかった。ハイシーズンに向けて(運賃を)あげればよいと思っていた」

次に、運転手の健康チェックや運行関連書類の不備です。出発前、運転手2人の健康チェックを担当するのは高橋社長でした。しかし当日、高橋社長は遅刻。健康チェックを経ないままバスは出発してしまいました。運行会社が運転手に手渡す「運行指示書」には、本来あるはずのルートの記載がありませんでした。加えて、到着前にもかかわらず運行管理の書類には、到着を確認するハンコが押されていました。

また、運転手の技量不足も指摘されています。事故発生時に運転を担当していた運転手は、昨年12月に「イーエスピー」に入社しています。その際、道路運送法で義務付けられている適性診断を同社は受けさせていませんでした。適性診断はバスやトラックの運転の癖を把握し、改善指導するために受けさせる必要のあるものです。その運転手は以前の勤め先では小型バスを専門に運転していました。しかし、適性診断を受けなかった結果、大型バス運転の研修を2回受けたのみで終わりました。高橋社長は適性診断を受けさせなかった理由についてこう言います。

「前の会社で適性診断をやっているので、その結果を持ってくる(予定だったため)」

死亡した乗客は12人にのぼります。全員、大学生です。これから明るい未来が待っていた人たちです。その将来を奪った罪はとても重いです。ましてや、これだけのずさんな管理体制を放置していた結果の事故。無念でなりません。当たり前のことを当たり前にしていれば、若い命は奪われずに済んだかもしれません。徹底的に運行会社の怠慢を糾弾し、真相の解明を期待します。

 

参考記事:

18日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面「バス 速度超過か」、社会面「事故バス運行会社『大型部門を撤退』」

同日付 読売新聞朝刊(同版)社会面「転落前 急ハンドルか」

同日付 日本経済新聞朝刊(同版)社会面「法廷下回る運賃 横行か」