フライヤーとは
情報を伝える紙媒体としてチラシやビラがあり、欧米では飛行機で空からばら撒かれることから“flyer”と呼ばれていました。日本では、イベントの告知などの目的で、A6などの小さめのサイズで作られたものを「フライヤー」と呼びます。
演劇×フライヤー
劇場に入ると、厚さが1㎝にもなる大量のフライヤーの束が各座席に置かれています。持ち帰るも残すも観客の自由ですが、開演までの間、興味を引く演劇がないかチェックしたり、友人との話のきっかけにしたりしています。
SNSで宣伝できるのに、なぜわざわざコストをかけてまで、フライヤーを作るのでしょうか。これは観劇を趣味とする一個人の意見ですが、演劇と紙というのはどちらもアナログな世界観が背景にあるからだと思います。演劇は初日から千秋楽まで、ほぼ毎日、その日の観客のために演者らは舞台に立ち続けます。また、1つの舞台上で展開されるため、シーン転換も映画のようにはいきません。終始、同じ場所を舞台にするか、効率的に箱馬(演劇でよく使われる木箱)などの舞台美術を移動させ、場面を転換していきます。画面越しでは感じられない、このような観客をぐっと引き込んでいく、手作り感あふれる創意工夫が紙にも共通するのだと思います。
フライヤーの魅力はそれだけではありません。単なる宣伝媒体に留まらず、ずっと見ていたくなるような芸術的なものもあります。また、鑑賞の後に見返すと「だから、こんなデザインになっているのか!」と先ほどまで楽しんでいた演劇の中身とリンクし、ストーリーのなかに張られていた伏線が結末で回収されるときのような爽快感を味わうこともあります。
コロナ禍で幾度となく延期や中止を余儀なくされている演劇業界。数か月に渡り、稽古し作り上げても、千秋楽までたどり着くことができないなんて悲劇、最近の演劇では、もはやよくあることかもしれません。今回のコロナの第7波を受け、Twitter上でも役者をする友人の「公演中止のお知らせ」が流れてきました。
たくさんのフライヤーがあるということは、その分だけ、作家や演者によって作り込まれた作品があるということです。演劇に興味がない人でも、いつか劇場に足を運ぶことがあれば、開演までの時間だけでも、ペラペラとめくって欲しいものです。それだけで「色んなことをやる人がいるんだなぁ」と、楽しめるはずです。
参考資料:
ラクスル、「【印刷の基本知識】チラシ・フライヤー・ビラの違いとは?」
参考記事:
28日付朝日新聞夕刊(東京4版)2面、「子どもに見せる、記憶の不思議 白石加代子、舞台『さいごの1つ前』」