名刺に「思い」巡らせて…

大学生活のプチ自慢といえば、名刺の交換数かもしれません。「あらたにす」の活動はもちろん、長期インターン先での同行取材、学生団体での営業、そして就職活動と、筆者は多くの場面で名刺を交換してきました。「あらたにす」でのアポ無し取材では、相手から警戒心を拭い去る魔法のような存在でした。現在、筆者の手元にはいただいた47枚の名刺があります。そこには47人分の思い出が詰まっています。

大学時代に交換した名刺たち(25日筆者撮影)

23日の日本経済新聞社夕刊では、名刺の歴史について紹介していました。日本国内で古くから続くビジネスツールの歴史は、江戸時代まで遡れるそうです。最近では、デジタルの名刺をやりとりする企業も増えてきたのだとか。クラウド上で相手が所属部署や連絡先を更新すれば自動で反映され、管理しやすくなったとされています。

あらためて、もらった名刺を手にとって見返すと、交換した時の情景や相手の人柄をつぶさに思い出すことができます。積み重ねて感傷に耽ることも。いずれは完全デジタル化で追いやられるかもしれませんが、紙の名刺には魅力が詰まっていると考えます。

 

名刺を眺めていると、会社ごとにデザインが大きく異なることが分かります。紙質も分厚さもバリエーション豊かです。

表は日本語表記、裏は英語表記のものが最も多く、自社のオリジナルキャラクターが描かれたものも複数ありました。システムサービス企業「フジキンソフト」の営業職の方は、名刺に顔写真とニックネームを記載していました。企業全体で覚えてもらうための工夫だそうです。

一際目立つのが折り畳み式の名刺です。愛知県碧南市の市役所へお勤めの方からは、開くと地元の観光名所が一覧となっている名刺をいただきました。市のPRに打ってつけだと感じます。「あらたにす」で以前取材させていただいた埼玉県立近代美術館の学芸員の方からは、和紙に氏名が刻まれた名刺をいただきました。「素敵な名刺ですね」。その一言から話に花が咲き、取材の緊張感が解けたことは何度もあります。

「あらたにす」の名刺は記事のリンクに飛べるQRコード付き。赤を基調としたデザインが気に入っている(25日筆者撮影)

「説明会やインターンに参加した際は、作成したオリジナルの名刺を社員と交換する」。以前、「あらたにす」のミーティングで仲間の学生が発した言葉です。就活を機にインターネットで名刺を発注する学生は少なくありません。私もインターン先で、恐る恐る名刺を差し出し、人脈を築いた経験があります。憧れの企業の方と名刺を交換した際の、興奮冷めやらぬ気持ちは今でも覚えています。「ここに自身の名前を刻みたい」。そう強く願い、就職活動に励んだものです。しばらくお守り代わりに、机の上に飾っていました。

たった一枚の紙切れですが、出会いを結び、時に自身のモチベーションに繋がります。そう思うと、不思議な気持ちに駆られます。

名刺平均交換数が20代の平均で1000枚と言われるこの時代、社会人になれば筆者も名刺交換にうんざりする時が来るかもしれません。仕事ですから背伸びした気分になれる学生時代とは意味合いも大きく異なるでしょう。それでも、名刺を整理する際は、一人ひとりのご縁に思いを巡らす、そんな社会人になりたいと思います。

 

参考記事:

23日付 日本新聞夕刊 8面 埼玉 「名刺、江戸時代でも交換」