女の子は赤で、男の子は黒。そんなランドセルの常識は既に時代遅れなのかもしれません。
東京・新宿にある小田急百貨店の子供用品のフロアを訪れると、一際カラフルなスペースがありました。エメラルド、水色、黄色、白と何十色ものランドセルが並べられていました。こんなにも沢山の種類があるとは全く予想していなかったので驚かされます。とりわけ目に付いたのは可愛い音符の刺繍付きの黒色のランドセル。黒色のランドセルは女の子にも人気があります。黒が男の子だけの特権だなんていう概念は、ここにはありませんでした。
筆者がランドセルを買った15年前は、他の色が少し出始めたとはいっても、いまだに赤とピンクが圧倒的でした。当時、水色が好きだったのですが、相場は赤かピンクと決められていました。それでも、どんなピンクを選ぶのかで少しでも個性を出そうと悩んでいたのを覚えています。新しい門出を迎える子供にとって、これから6年間共にする相棒選びは、それほど大きなイベントだったのです。
人気の色は、その年の流行によっても変わるそうです。「『アナと雪の女王2』が流行った時は、主人公のドレスの色である紫色が人気でした。今は水色も人気です」と店員さんは言っていました。また色だけではなく、柄や形まで多種多様です。リボンやハートの刺繍からブランドのロゴまでどれも個性的です。
一方で、「男の子は8割がた、黒を選びますね」とのこと。たしかに店頭で男の子用のスペースと見られる側に置かれていたのは、大きく分けて、黒系、青系、シルバー系の3種類。反対側に比べるとかなり地味な印象でした。「でも、ここには無いんですけど、最近はゴールドも男の子に人気になっています」と店員さんは教えてくれました。
つい最近まで赤とピンクしかなかった女の子のランドセルの色の種類がこんなにも多彩になったということは、男の子のランドセルがカラフルになる未来もそう遠くないのではないでしょうか。
ジェンダーによる色の固定的なイメージ。日本文学者のロバート・キャンベルさんの訳で出版された「ピンクはおとこのこのいろ」(ロブ・パールマン・文、イダ・カバン・絵)では、男女の色の常識にとらわれずに、あえてイメージを反転させて、ピンクのネクタイをつけた男の子や、青のユニフォームを着た女の子を描いているといいます。
子供にとってランドセル選びは、初めて子供が自分のアイデンティティを選択する瞬間でしょう。「黒以外を選べ」と男の子に言っているわけではありません。黒がいいと思うのなら、それで良いのです。ただ、子供に自由に選ばせてほしいものです。「この色であるべきだ」という常識にとらわれず、無限に広がる中から、自分だけのマイランドセルを見つける。そんな時代を迎えるであろうこれからの子供たち。率直に羨ましく感じます。
参考記事:
28日付 日経電子版「プリンセスだけじゃない 多様な女性、絵本で紹介」