知っていますか? 「日本遺産」

「日本遺産」。友人と東京都八王子市にある高尾山に登ったとき、下山途中の道で、そう書かれた旗を見つけました。「世界遺産なら知っているけど・・・」。何となく気になり後で調べてみると、文化庁が2015年に、地域に点在する文化財を有効活用するために創設。自治体からの申請に基づき、歴史的建造物や名勝地、祭りなどを合わせて認定する仕組みです。重要文化財などのように個別に認定するわけではなく、様々なものを、地域に即した物語として発信する点に特徴があります。

高尾山からの景色

 

筆者が訪れた高尾山は「霊気満山 高尾山〜人々の祈りが紡ぐ桑都物語〜」として、2020年に認定されています。そのストーリーの内容としては、養蚕や織物で発展してきたことから「桑都」と称されていた八王子の歴史を、高尾山の繋がりによって、過去から現在、未来へと紡いでいくというもの。高尾山をはじめ、城跡、祭りなど29件の文化財から構成されています。現在、認定されているのは104件。都内では、高尾山が唯一とのことでした。

地域の文化財を発信し、その土地の活性化や観光振興につなげる日本遺産ですが、その目的や役割を果たせているのかという意見もあるようです。先月21日の読売新聞で「日本遺産 地域の活性化につなげるには」という社説が掲載されていました。

それによると、2020年に文化庁が行った調査で、「認定遺産を知っており、制度も理解している」と答えた人は1割強にとどまっており、約3割は日本遺産という言葉を聞いたことがないと回答したと言います。正直なところ、筆者自身もこの制度について全く知らなかったため、高尾山が日本遺産であることを知っても、思わず「すごいのか・・・?」と感じてしまいました。遺産の歴史的価値や面白さがあるのにうまく伝えられておらず、実際の認知度が低い今の状況はとてももったいなく思います。

他の地域の日本遺産を調べてみると、たとえば京都の「日本茶800年の歴史散歩」では、約800年にわたって最高級の多種多様なお茶を作り上げてきた京都・南山城について、茶道文化についての歴史や景観を紹介。和歌山県の「鯨とともに生きる」では、捕鯨が行われてきた地域の歴史や祭り、伝統芸能、食文化など受け継がれてきた文化財を発信していました。

じっくり読んでみると、一つ一つのストーリーはとても面白く、その地域にある歴史や伝統を深く学ぶことができます。文化財を発信し、観光や地域振興につなげることは回り回って、その文化財自体を守り受け継いでいくことにもなります。文化庁だけにとどまらず、観光庁や自治体と協力して、有効な制度になるようにしていってもらいたいと感じました。

 

参考記事:

2月21日付読売新聞オンライン「日本遺産 地域の活性化へつなげるには」

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20220220-OYT1T50195/

参考:

日本遺産ポータルサイト

https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story088/