17日、菅義偉首相の後任を選ぶ自民党総裁戦が告示された。
岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎行政改革相、野田聖子幹事長代行の4氏が立候補。それにともない開かれた共同記者会見では、各候補がコロナ対策や経済対策など目玉政策に熱弁を振るった。
今回は岸田派を除く6派閥が事実上の自主投票を認める異例の総裁選だ。派閥の領袖の号令で菅総裁が選ばれた昨年とは対照的である。
派閥による「締め付け」の緩みと反比例して、当選回数の少ない若手議員の動きが活発になっている。その代表が「党風一新の会」だ。当選3回以下の衆院議員90人により構成されている。党内全7派閥から議員が参加しており、派閥横断型の議員連盟だ。
若手議員の集まりにも関わらず、「党風」という古めかしい言葉を冠しているのは、「党風刷新連盟」を意識してのことだろう。こちらは、1962年、池田勇人内閣のもとで福田赳夫氏が発足させた議員連盟だ。池田内閣の高度経済成長政策を批判していた福田氏は、反池田派、反主流派の活動拠点として「新連盟」を結成させたのだ。
実は「党風一新の会」の中心人物が福田赳夫氏の孫にあたる福田達夫衆院議員なのだ。グループ名に「党風」を冠しているのは、祖父がつくった「党風刷新連盟」を意識してのことだろう。
その後、福田赳夫氏は「新連盟」とともに党内反主流派として活動。最後には総理大臣まで上り詰めた。辞職後は「新連盟」を「清和会」に改称し、初代会長に就任している。この「清和会」こそが、安倍前首相を輩出した党内最大派閥・細田派である。
10日、「党風一新の会」はオンラインで設立総会を開き、緊急提言をとりまとめた。提言では、「安倍、菅両政権下での強引ともとられる政権運営」に触れ、党の意思決定過程が国民の不信感を招いていることを指摘し、政策立案能力の強化や若手の登用などを訴えた。さらに総裁選の候補者との意見交換の場を設けることも求めたという。
祖父と同じ行動をとる福田氏。「党風一新の会」は令和の日本政治にどのような影響を与えるのだろうか。派閥の領袖によって潰されるのか、はたまた、祖父が築いた清和会のように新たな党内勢力に成長するのか。今後の動きに注目だ。
参考記事:
朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞 総裁選関連記事
参考資料:
石川真澄、山口二郎『戦後政治史 第三版』岩波書店、2010年
清和政策研究会HP