平壌を駆ける地下鉄に想う

北朝鮮の国旗は三色で構成されています。赤、青、白。赤は社会主義を、青は平和を。そして、白は「祖国発展の光明」を象徴しています。祖国発展の光明─。具体的に何を指すのかは分かりません。ですが、北朝鮮はその一抹の光を公開しました。地下鉄です。

朝鮮労働党の創建70年を迎え北朝鮮は9日、平壌市内を走る地下鉄を外国メディア向けに公開しました。市内中心地と郊外を結ぶ8駅9.5キロの千里馬線。その主要駅「復興駅」の改札口には「先軍朝鮮の太陽金正恩(第1書記)将軍万歳」とハングルで掲げられています。地下約100メートルを走り、運賃は区間均一の5ウォン。1日の利用者数は約10万人とされています。

「(海外からの)メディアを歓迎します。我が国のことを広く伝えてほしい」

乗客の一人は記者団の取材にそう答えたそうです。

ならば、伝えましょう。メモリアルイヤーに国威をアピールするため、海外メディアを利用する。国内で情報は行き交わず、メディアも国の統制下。トップの権力を絶対化するため、側近の粛清が横行。拉致問題を解決する誠意は見られず、何度も約束を反故にする。核開発によって他国を挑発する一方、国民は飢えに苦しみ、深刻な人道問題が放置されている。それが、北朝鮮です。

日本外務省のホームページには、日本との貿易額の統計表に「0」の数字が並んでいます。経済情勢の項目はこう結ばれています。「経済全般を見れば,依然として厳しい状況が続いている模様」。

地下鉄を否定するつもりはありません。交通インフラは経済発展の基礎となります。ですが、地下鉄の開通は1973年。とすると、着工はもっと前になります。飢餓が跋扈している今日、もっとやるべきことがあったのではないでしょうか。

 

参考記事:10日付 読売新聞朝刊(大阪14版)国際面「北朝鮮が地下鉄公開 海外メディアに」