世界の自動車業界を揺るがしているディーゼル車の排ガス試験不正問題。独自動車会社フォルクスワーゲン(VW)はいま、社の命運をかけた岐路に立たされているといっても過言ではないでしょう。近年急拡大を遂げてきたVWは今回の不祥事でブランドイメージが大幅に悪化したうえ、対策費用の増大で財政面の悪化も懸念されています。では、私たちはこの問題を反面教師としてだけとらえておけば良いのでしょうか。実は、この一連の騒動の中にも、私たち日本が見習うべき一幕がありました。
それは、首脳陣の非常に迅速な対応です。18日に米国で不正が発覚してから、わずか1週間で、ドイツを代表し、急拡大を支えてきた大企業の首脳陣が大幅に入れ替わることになったのです。確かに、信用がものを言う大企業の首脳陣が入れ替わるリスクは大きいものかもしれません。しかしながら、そのリスクを恐れて、もしくは自らの保身のために、いつまでもポストにしがみついていては体制の立て直しは一向に進みません。最近の日本を振り返って見てください。オリンピックの一連の騒動について、首脳陣の決断が出たのはつい最近のことです。日本の決断の引き伸ばしが、五輪全体のイメージ悪化に繋がったことは自明でしょう。
もちろん、今回のVWの騒動で、日本が反面教師にすべき点も多々あります。VWが築き上げてきたブランドは、この騒動で一夜にして崩れ去りました。築城10年落城1日とはまさにこのことです。また、この騒動の対策費用はリコールの技術費用だけでなく、訴訟も発生すれば全く見通しが立たない状況です。ものづくり、特に人の命を乗せて運ぶものづくりは、信用が命です。日本のものづくりにおいても、改めてその点を考えなおす良い機会になったのではないでしょうか。
参考記事:26日付日本経済新聞朝刊(東京13版)1面「VW、経営陣刷新へ」
同3面「VW多難」同7面「時価総額、4兆円超失う」