駆けっこやドッジボールで負けると、泣いて物を壊すばかりか、同級生をたたいたり蹴ったりする小学1年生の男児。止めに入った教師もたたき始める。このような小学生の暴力行為が過去最多となりました。文部科学省が16日に発表した2014年度「児童生徒の問題行動調査」によると、小学生の暴力行為は前年度より572件多い1万1468件に上り、2年連続で1万人を超えて過去最多になりました。文科省は「感情のコントロールが上手くできない子が増え、些細なことで暴力に至る傾向がある」と指摘しています。その原因はどこにあるのでしょうか。
都内公立小学校の30代の男性教諭は「思うようにならないと手が出る子はクラスに1、2人はいる。若手教師が増えて指導が行き届かないことや家庭で我慢する経験が少ないことが影響しているのではないか」といいます。
でも、子どもの暴力が増えている原因を、教師の指導力不足にだけ求めれば済むのでしょうか。私が小学生のころは、家庭で先生は目上の人であると、当然のように教えられていました。ところが、最近の保護者と教師の関係を見ると、いわゆるモンスターペアレント問題にみられるように、教師という存在を軽視する傾向があるのではないでしょうか。そのような親の姿勢をみて、子どもは自然と教師の制止を振り切るようになっているのかもしれませせん。
また、日本教育カウンセラー協会理事の諸富祥彦さんは、「学校で暴れる子は、家で親からどなられるなどしてストレスをためており、それを学校で発散させている場合が多い。凶暴なのではなく、おびえている子もおり、安心できる環境を作ることも必要だ」といいます。子どもたちが暴力を振るうのには、必ず原因があります。もしそれが、家庭やクラスでのストレスであったら、教師はどう対応すればよいのでしょうか。子どもを上から押さえつけるのではなく、落ち着くのを待って、話を聞いてあげることが大事です。
喧嘩している時など、間に割って入って叱りつけるのではなく、お互いの話を聞いたうえで諭してくれるような先生がいたのを思い出します。なりふり構わず怒る先生よりは自分のことをわかってくれる気がしましたし、心も落ち着きました。小学生のころにそのような経験をした人は少なくないはずです。
確かに現在の小学校やその教員を取り巻く環境は単純なものではないでしょう。しかし、子どもの目線で、子どもたちのストレスを理解してあげる教育がひときわ重要になっていると感じます。環境に振り回されてしまう子どもたちが、一方的に悪いわけではないのですから。
参考記事:9月17日付読売新聞朝刊(東京12版)18面「小学生の暴力最多1万1468件」