8月15日で戦後70年。全国戦没者追悼式が日本武道館で行われました。安倍首相は、未来に向けて戦争の惨禍を繰り返さないことを誓いました。すでに首相は前日、戦後70年の談話を発表しているので、この日は天皇陛下による追悼式の「おことば」が注目されていました。追悼式など公式の場では前例を踏襲した「定型」の内容が慣例です。しかし、陛下はあえて変更しました。「さきの大戦に対する深い反省」などの表現を含めた4箇所です。
そのことをどの新聞も平和へのつよい思いが滲むものとなったと伝えていることは納得できます。実際に激戦地をいくつも訪問した陛下だからこそ語られる「深い反省」。そこには平和に対する思いが込もっています。
陛下は、戦後60周年の際にサイパンに慰霊訪問されています。昭和19年(1944年)の戦闘において、追い詰められた日本兵や民間人が、アメリカ兵からの投降勧告に応じることなく崖下の海に身を投じて自決した地です。バンザイクリフやスーサイドクリフという地名が悲劇を物語っています。
私も小学6年生の時にサイパンへ慰霊訪問しました。数名の児童や生徒を派遣する国際プログラムです。そこでどんな過去があったかという事実を知り、戦争の背景の複雑さ、歴史認識の重みにただ戸惑うばかりでした。あれから9年。今でも思い出すのはサイパンの景色です。磯の強い香りが漂う白い砂浜。コバルトブルーの海。緑がうっそうと茂るジャングル。一方で大事なテーマだとわかりつつも難しいと感じてしまう私がいるのです。
もちろん、平和であることを願うことは変わりません。陛下と同じ景色を見たのにもかかわらず、私は意識的に平和や戦争について考えることを避けてきたような気がします。
これまでの日本の歩みをどのように位置づけ、今後の平和をどう築いていくか。そんな私はどう考えればいいのでしょうか。今までのように思考停止ではすまされません。70年経ち、いま安全保障法案の国会審議が着々と進んでいます。平和を願うことは共通しているものの、立場や主張によってさまざまな意見が交錯します。これはメディアの報道から伝わるだけでなく、安保に対するデモの参加者や15日の靖国神社参拝で私が出会った人からもいえます。時々、平行線をたどる議論にむなしく感じることもあります。しかし、現在および将来の日本の安全保障について現状を踏まえ、冷静に判断したいものです。日本にはどんな道があるのか、その道を進むことで日本が周辺諸国からの脅威に対応することができるのか。しっかりと考えていきます。
参考記事:8月16日付、各紙関連面