東京五輪中止? 諦めるのはまだ早い

東京が危機的状況に直面しています。今日の感染者数は2,392人。感染拡大に歯止めがかかりません。政府は1都3県に対象に、緊急事態宣言を発出。とはいえ、飲食店が時短要請にどの程度応じるのか。在京企業が仕事をどこまでリモートワークに切り替えられるのか。実効性は不明です。

東京五輪も開幕まで残り200日を切っていながら、国内の悲観論が高まっています。自民党の二階幹事長は「『開催しない』という考えを聞いてみたい。自民党として開催促進の決議をしてもいいくらいだ」と強気の発言。組織委の森喜朗会長も、開催の可否について「不安?全くありません」と語りましたが、両氏の発言に対しては非難が集中。早々に中止を決定せよ、との否定的な意見が多く上がっています。しかし、それでも尚、筆者は東京五輪の開催を熱望しています。

確かに、直近数週間の感染拡大は厳しいものがあります。現在の勢いが続くならば、開催不可能という結論に至るのも一理あるでしょう。ただ、長期的な視野で見れば、状況が悪化し続けるとは考えられません。昨年2月以降、感染者数は常に増加で推移していた訳ではなく、増加と減少を繰り返しています。また、8月下旬から11月中旬までの間、都内の感染者数は150〜200人程度で安定していました。感染者を激減させることが無理だとしても、一定数でコントロール出来ていれば、防疫体制として問題ないと思います。Go to キャンペーンを停止したり、飲食店のルールを厳格化したりするなど、適切に対策を講じれば第三波の収束も可能なはずです。

また、最近の日本はパニックに陥っていますが、世界的に見れば比較的安全な方です。World Meterのデータを参照する限り、累計や直近24時間の感染者数において、日本は中位。しかも、人口100万人あたりの感染者は2,046人で、世界平均の11,351人を大きく下回ります。感染者爆増の原因となっていた欧米でも、先月からワクチンの接種が開始。今春以降は、流行の抑制を期待できるのではないでしょうか。

開催可否を考えるうえで、アスリートたちの努力を無視することも出来ません。昨年、テレビ番組「ガイアの夜明け」で、五輪の開催を信じて、必死に練習を続ける代表選手の姿を目にしました。私たちに希望や勇気を届けようとする彼らの努力を無碍にすることは出来ないと痛感しました。「五輪は中止してしまえ!」と軽々しく発言することなど、もってのほかです。

経済的に大赤字になるのではないか、という指摘があります。しかし、無観客試合になって、何千億円の損失が出ようとも、開催はすべきです。低成長に喘ぐとはいえ、日本は世界3位の経済大国。戦争で中止になった1940年に続き、2020年というハズレくじを引いてしまったのは痛恨の極みですが、自ら立候補した以上、責任を持って開催準備を進めるのが大国の務めです。

国外の感染状況については、我々の力ではどうすることも出来ません。海外で流行が止まらなければ、中止は十分あり得ます。世界のアスリートたちが日本に来たくない、と言う場合も、開催は断念となるでしょう。組織委は、当然そのような可能性も考慮しなければなりません。とはいえ、時間はまだ残っています。我々は「開催を中止せよ!」などとネガティブキャンペーンを張るのではなく、今こそ耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、東京五輪の開催を信じて、静かにステイホームしましょう。

参考記事:

朝日新聞、日経新聞、読売新聞  東京五輪の開催可否についての記事

 

(日経電子版より)