ジョン・レノンの死から40年 音楽とお笑いの行方は

ビートルズの元メンバー、ジョン・レノンがニューヨークの自宅前で撃たれて亡くなってから、昨日で40年が経った。事件現場のそばには多くのファンが訪れ、献花したりビートルズの曲を歌ったりする様子が伝えられていた。その様子を見て、私は昨年大学で受講した講義を思い出した。地域文化論という授業で、内容は「ビートルズから見る20世紀のイギリス文化」だった。

この授業で一番印象に残ったのは、ビートルズの魅力は音楽の専門性だけではなく、彼らならではの「お笑い」精神があったからこそ、ということだ。ビートルズはウィットに富んだジョークや楽しさで、それまでの音楽の世界にはなかった自然な喜劇精神をもたらしたという。音楽とお笑いという一見かけ離れた二つが合わさって新しい文化が誕生したこと、また、それを可能にしたのがビートルズだということに大変興味を持った。

授業の教科書としても使われた『ビートルズは音楽を超える』という本では、ビートルズと親しかったイヴニング・スタンダード紙のジャーナリスト、モーリーン・クリーヴの証言が紹介されている。

 「ビートルズといると大笑いしてしまうのよ……彼らのウィットはとにかく鋭くて強烈だった。ジョン・レノンは特にね。」

ジョン・レノンのウィットを代表するものとして、こんなエピソードがある。上流階級が多く出席していたパフォーマンスで、激しいロックンロールである「ツィスト・アンド・シャウト」を歌う前のことだ。「応援お願いします。安い席の人は手を叩いてね。それ以外(の高い席)の人は宝石ジャラジャラ鳴らしてよ」と語りかけ会場を沸かせたという。まさしく音楽の世界にジョークを持ち込んだ人物と言って良いだろう。

今年は新型コロナウイルスに襲われ、世界中が大きな変化に見舞われた。また、政治の不安定や格差、貧困が広がる中で、多くの人から「お笑い」精神が消えていったような気がする。

こういったジョークに、今の時代は寛容であるだろうか。ジョン・レノンが生きていれば今年で80歳だったそうだ。今の時代に、どんな曲、どんなジョークを残していただろう。

 

(読売新聞の記事から引用)

参考記事:

9日付 読売新聞朝刊(東京13版)31面 「ジョン・レノン 没後40年悼む」

9日付 朝日新聞デジタル 「ジョン、マスク着けろよ」ファン集結、世代超え追悼

参考文献:

武藤浩史『ビートルズは音楽を超える』平凡社新書(2013)