全国の大学がオンライン化にシフトしてから、はや半年。多くは対面授業を再開していますが、首都圏の私大の中にはウェブ授業を全面的に継続しているところもあります。自分のペースで予習、復習がしやすいといった声がある一方で、人間関係が疎遠になり、うつ病を発症する学生が増えているという報道も。賛否は割れています。冬場にかけては、感染症の第3波が来襲する恐れが指摘されており、対面授業の拡大・縮小について、各大学は引き続き難しい判断を迫られることになるでしょう。
学術界で脱・対面が起きているのは、大学の一般授業だけではありません。学術大会や研究発表の機会でも、オンライン開催が定着しつつあります。今回の記事では、学会や研究会に参加した学生の意見を紹介したいと思います。
「オンライン学会の最大のメリットは、開催費用の低さだ」と、理学研究科の先輩は語ります。所属する物理学会では、従来、年次大会を開催するのに数百万〜千万円程度の経費がかさんでいました。参加者は会場への交通費や宿泊費も必要でした。それが、今では有料版のウェブ会議システムを利用する以外、支出はほぼ無いそうです。他の参加者と交流する機会が限られることを欠点として挙げつつも、「慢性的に研究費不足に悩まされている日本の学術界にとって、コスト面のメリットは大きい。コロナ禍が去った後も定着していく可能性はあり得る」と話していました。
文学部で学ぶ同級生は、所属ゼミの教授からの誘いを受けて、数ヶ月前から日本近世史のオンライン研究会に参加しています。彼は学部3年生の身ながら、高名な研究者たちの議論を目の当たりにすることが出来て、大きな刺激を受けたそうです。「普段なら躊躇しがちな高尚な場へ参加する敷居が低くなったところに利点を感じている」
このように学会、研究会のオンライン化には、質疑や議論のしづらさに若干の問題があるものの、コストの低さや新人の参加しやすさという点で大きなメリットもあります。まだまだ手探りの部分も多いかと思いますが、長所を最大限生かすことで、学術界の裾野を広げていって欲しいものです。
参考記事:
4日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)15面「オンライン授業 質高める工夫」