出生前検査 踏み込んだ規制作りを

世の中には、多くのルールがあります。それらで、私たちは守られ、安心して生活することが出来ています。しかし、ルール作りが時代の変化に追いついていないことも多々あります。出生前検査に関する規制作りもその1つです。

出生前検査は、技術の発達と共に、精度が上がり、簡単に出来るようになりました。新型出生前診断NIPTに関しては、母体の採血検査で、胎児の染色体異常の有無を調べられます。検査を受けるハードルが低くなり、出生前検査が身近になりつつあるのが現状です。一方で、検査の簡易化は、検査環境の整えやすさにも繋がっています。つまり、規制をしなければ、どこでも検査が出来てしまう恐れがあるのです。事実、最新の調査で、NIPTの半数以上が日本医学会の認定を受けていないクリニックなどで行われていることが明らかになっています。

そもそも、認可施設と無認可施設の違いは何でしょうか。妊婦側の視点だと、検査を受けられる年齢制限の有無が一番に挙げられると思います。認可施設になると、原則35歳以上との規制があるため、望んでも受けることが出来ない妊婦の方が出てきてしまいます。無認可施設だからこそ、需要に応えられる面もあるのです。需要があり、厳しい規制もなく、簡単に検査環境を整えられる。無認可施設が増え続けるのは容易に予想できます。

利便性の面では、勝っているようにみえる無認可施設。ですが、出生前カウンセリングが適切に行われない可能性が高いのが現実です。医師からの説明が不十分のまま検査を受けるケースが多くあります。これでは、安易な中絶を助長するだけでなく、妊婦のメンタルケアも適切に行うことが出来ません。早急に規制作りに取り掛かり、無認可施設での検査の横行を食い止めるべきです。

出生前検査の議論はなかなか進みません。だからといって、議論を前に進めなければ、どんどん発達する技術に取り残されてしまいます。20年ぶりに始まる出生前検査に関する国の本格的な議論。ようやくスタートラインに立ちました。検査を受けるか受けないか、検査結果にどう対応するべきなのか。正しい判断が出来る環境が整うように、一歩踏み込んだルール作りを求めます。

参考記事

28日付 読売新聞朝刊(東京13版)2面 「出生前検査 本格議論へ」