「カウチサーフィンで宿泊先を決めようよ!」。留学中にイスタンブール観光をしようと、宿泊場所を探していたときのことです。友人にそう誘われて、インターネットで宿泊場所を探しました。最初はカウチサーフィンに抵抗があった私ですが、友人も一緒だし大丈夫だろうと、見ず知らずの人の家に泊めさせてもらいました。実際にホストに会ってみると、本当に親切な人でした。一緒に市内をまわったり、将来の夢を語ったり。旅の良い思い出となりました。もちろん宿泊料などは払っていません。心を込めて「ありがとう」と伝えただけでした。
カウチサーフィンは、インターネット上の無料国際ホスピタリティー・コミュニティーです。宿泊先を探している旅行者などと、空いている部屋を貸したいホストの橋渡しを、ウェブサイトを通じて無償で行っています。近頃、日本でもこうした宿泊シェアを利用する人は増えています。その背景には、ホストとゲストを結びつける仲介業者の存在があるようです。そうした仲介業者は手数料の支払いを利用者に求め、利益をあげています。海外でも新たなビジネスとして注目されており、ブラジルのワールドカップでは、国外からの訪問客が宿泊先を探す際に役立ちました。
しかし、「善意」から旅行者などを無償で泊まらせるホストばかりではないのが現状です。空き部屋、空き家、別荘などを継続的に提供して収入を得ている個人もいるようで、そうした人々が旅館業の営業許可を得ている可能性は低いと考えられます。旅館業法のもとでは宿泊者名簿の備え付け、部屋の数や広さ、衛生設備などの細かい規制があり「空いているから希望者に提供する」というレベルの個人が簡単に許可を取得できるものではありません。規制を守るにはコストがかかります。営業許可を得ている本来の旅館業者側が、仲介業者のサービスを批判したくなるのも当然でしょう。新たなビジネスの参入は、議論すべき点もあるようです。
一方、仲介業者が提供するサービスにより、空き家や空き部屋を宿泊の需要に対応させることができるのは、素晴らしいことだと思います。東京五輪でのホテル不足が懸念される昨今、このようなサービスは日本の観光業を支えるのに重要な役割を果たすでしょう。筆者が経験したように、外国人観光客が日本人と過ごす時間を持てるというのも、双方にとって良い体験になるでしょう。無償で空き家や空き部屋を貸す人ばかりではない。それが現実ならば、立法措置で宿泊シェアを普及させることが必要ではないかと考えます。一期一会の出会いの裏に、浅ましげな心が見え隠れするようでは旅行者も興ざめです。
皆さんは、宿泊シェアサイトを利用されたことはありますか。今後、さらに宿泊シェアが普及するのであれば、どのような立法措置が必要でしょうか。
参考記事:
10日付 日本経済新聞(大阪12版)17面(マーケット総合2)「大機小機 宿泊シェアと旅館業規制」
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