先日、筆者の所属しているボランティア団体の仲間数人で食事をしました。中にはOBとその子どもの2歳の男の子が。一家と親しく、面倒を見るのも慣れている同団体の仲間が男の子の隣に座っていました。男の子が食べていたのはナポリタン。とにかくそれを口に運ぶことに集中している彼は、顔や服がソースでべたべたになってしまうことなどお構いなし。握り締めたフォークに手も使って、もぐもぐと一生懸命に食べる姿はなんとも愛くるしく、いつまでも見ていたくなります。
一方で、彼の面倒を見ている仲間はかなり大変そう。どれだけ食べられるかわからないため少しずつ何度もお皿に取り分けるだけでなく、所構わずソースまみれの手でお店の机や椅子などを触ろうとするのでこまめに手や顔を拭いてあげています。気になって仕方がないのがお冷やの中のレモン。掴もうとすればコップが倒れそうに。片時も目が離せません。
彼にはほかにも小学2年生のお姉ちゃん、来年就学のお兄ちゃん、生まれたばかりの弟がおり、4人きょうだいなのだそう。お母さん含め全員が揃った食事は、賑やかだけれどもっと大変なんでしょうね、とお父さんに話すと「そうそう。だからワンオペ育児って相当大変だと思う」と返ってきました。
お父さんは小学校教員で、今は育休をとっているのだそう。男性教員で育休を1年近く取る人は未だなかなかいない、取ればいいことたくさんあるんだけどね、と話してくれました。家族の時間が増え子どものことをよく理解できるようになるし、出産で大きなダメージを受けたお母さんの負担軽減になります。女性の社会進出への大きな後押しにもなるでしょう。
それでも未だ男性の育休取得が広がらない原因を話すうちに、育休が「ブランク」「キャリア中断」といったマイナスイメージを持たれていることが話題になりました。男の子の隣に座り、慣れた手つきでナポリタンを捌く仲間は指摘します。「育児期間がもっとプラスに捉えられてもいいのに。マルチタスクをこなし、コミュニケーションが難しく思い通りにならない人を四六時中相手にすることでつく力は確実にある」
それを聞いた時は目から鱗が落ちました。筆者自身はまだ学生ですが、社会人のキャリアのなかで遅れをとってしまうのではないかと産休や育休に対しては複雑な思いを抱いていたからです。
26日付の朝日新聞に、中高大学で教える女性教員の割合が今年度過去最高になった、という記事がありました。文科省の学校基本調査(速報値)によるものです。女性が働きやすい環境の整備が進んだ結果とも見られますが、未だ高校や大学の女性教員は3割前後で、上の学校になるほどその比率が下がる傾向は変わっていないといいます。また、文科省担当者は「管理職はまだ少ない。能力ある女性の積極登用が進んで欲しい」と話しています。
今や女性が働いていることは珍しいことではないです。それでも職業や役職によって男女差があるところは少なくありません。管理職の女性は独身や子どもを持っていない人が多い、と以前、知り合いの産休前の女性が嘆いていました。
本当の意味での女性の社会進出が達成されるためには、根強く残る男女の役割への思い込みや分業意識を払拭し、育休や産休に対する社会全体のイメージをプラスにしていくことが必要なのだと思います。子育てする家庭を温かく支える社会を作っていくために、出産や育児の実態を知り、その大変さを理解していく姿勢を大切にしていきたいものです。
参考記事:
26日付朝日新聞朝刊(愛知14版)4面(総合4)「女性教員の割合 中高大学で最多 文科省調査」