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今月5日の正午。私はTOEICの受験申し込みのために公式サイトにアクセスしたが、1時間経ってもこの表示が変わることはなかった。
数日後、アクセス集中を避けるために申し込み方法が抽選に切り替わることが発表された。およそ9万9千人が応募したが、当選したのは4分の1足らずの2万3千人だったという。私は落選した。就活生である私の周りにも受験を希望する友人が少なくない。抽選に参加した7人に聞いたところ、全員が落選していた。
TOEICをはじめとした英語民間試験の成績は就職活動のエントリーシートに記入することが多いため、本選考の時期までにスコアを更新しておきたいと考える人は私だけではないようだ。しかし、コロナ禍で試験実施を取りやめていたTOEICがやっと再開した今、受験したいのにその機会が与えられていない現状がある。
こうした事態で検討されているのが、「自宅受験」の導入だ。受験者がそれぞれ家でオンライン試験を受けるもので、留学の際に使われることが多いTOEFLは既に3月末から実施している。
しかし、こうした英語民間試験の自宅受験は、大学の講義やテレワークと同じく性急に導入するべきではない。自宅でのオンライン試験では、受験時の公平性に疑問がつきまとううえ、個々の通信環境の差が試験結果に大きな影響を及ぼしかねないからだ。
まず、自宅受験ではやはり不正が起こりやすく、また、その発見が難しい。実際にTOEFLはA Iの顔認証システムで替え玉受験を防ぎ、ウェブカメラで試験中の受験者の目の動きを追ってカンニングを見破るなど、「最高クラスのセキュリティー対策」を講じているとしている。だがいくらオンラインで監視しても、膨大な数の受験者がいる中で、画面越しの不正を漏れなく防げるとは断言できまい。仮に試験中に接続が切れたら、不正をしてもいないのに疑われる可能性もあるだろう。
また、そもそも自分のパソコンを持っていない人や、自宅のインターネット環境が整っていない人もいる。試験のためだけにそのような設備を整える金銭的余裕のない人が、他の人と同じ環境で受験できないのでは、明らかに公平性を欠くだろう。コロナの感染対策として自宅受験が検討されているのは理解できるものの、導入にはかなり慎重になるべきだ。
とはいえ、当分の間は抽選による申し込みだろうから、次回の当選を願うしかないというのも、なんだかもどかしい。これまで通りの試験会場でも、感染対策をしっかりと行なった上でどうにか安全に受けられないものか。
一就活生の切なる願いである。
参考記事: 21日付 朝日新聞デジタル「英語民間試験、オンライン受験に活路 不正はどう防止?」