プロ野球 ボール飛びすぎ疑惑

待ちに待ったプロ野球、昨日開幕しました。関東は大雨が降りしきる悪コンディションだったものの、予定通りセパ両リーグ6試合が同時にスタート。これまでの鬱憤を晴らすかのように、各チームのエースは力投を見せ、熱闘が繰り広げられました。筆者が応援する楽天は、相手の守備の隙をつく積極走塁を見せて9得点。幸先の良い滑り出しに、晩ご飯が進みました。

(適時打を放つ鈴木大地選手:朝日新聞デジタルより)

延期を重ねたプロ野球がようやく開幕して、ひと安心。そう言いたいところですが、少し気になることがあります。ファンの中にも、最近の試合ぶりを見て違和感を覚えた方もいるのではないでしょうか。6月2日から16日まで、練習試合が計68試合実施されましたが、乱打戦が多かった…いや、多すぎたのです。

東京ドームの内壁直撃アーチ。ナゴヤドームの観客席まで突き刺さる超低空弾。西武ドームでの外野芝生席を越えて着弾する特大ホームラン。高めに浮いたボールを芯で捉えたにしても、打球の勢いが明らかに強すぎる。何かおかしいと感じました。

そこで、本塁打数を集計してみました。印象に違わず、練習試合での異常事態が明らかになりました。延長戦がない9回打ち切り制にも関わらず、1試合平均2.38本。過去10年間で最も高かった昨シーズンの1.97本を大幅に上回る値です。4本塁打以上が飛び出した試合は68試合中20試合にも上りました。

(NPBとスポーツナビが公表するデータを基に、筆者作成)

この現象は、投手の調整不足や、打者の能力向上によるものなのでしょうか。その割には極端すぎると思います。となると、公式球がおかしいのではないか、という疑惑が浮上します。生産を担うミズノ社に問い合わせたところ、6月以降に卸したボールの素材や製法は従来と変わらない、とのこと。反発係数が高いのではないかと聞くと、NPBが計測しているので当社は知らない、との答えが返ってきました。

考えられる可能性としては、2〜3月のオープン戦での1試合平均本塁打が、去年や一昨年よりも低かったので、球の反発係数を調整しようとした結果、目標値を大幅に超えてしまったこと。コロナのため流通に影響が生じて、実は普段と異なる生産地の素材を用いていること、などがあり得るかと思いました。

あくまで憶測に過ぎません。ただ、11年、12年には、NPBとミズノが統一球の反発係数を恣意的に調節したことがありました。事実を隠蔽して、選手に虚偽の説明を行ったため、厳しい批判に晒されました。また、15年以降はボールの反発係数の上限下限が撤廃されて、審査が甘くなっています。

観客からすれば、球が遠くに飛んでいくのを見るのは爽快です。しかし打高投低になりすぎると、投手の成績や契約に悪影響が生じます。過去の記録との公平性の観点からも好ましくありません。好記録が生まれても、実力ではなく飛びやすいラビットボールのおかげ、などと難癖をつけられかねません。引き続き、状況を注視したいと思います。

 

参考記事:

20日付 読売新聞朝刊(大阪13版)18、19面「この一球をこの一打をこのワクワクを待っていた」

20日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)16、17面「鈴木大 新天地で号砲、開幕 エースが祝砲」