買い占めと食品ロス

新型コロナウイルスの感染拡大により街からマスクが消えたのと同じように、スーパーの棚からも様々な食品が姿を消した。とくに緊急事態宣言が出された直後は、都内のスーパーでは慌てて食料品を買い込む人々の姿が見られた。自分の行動を振り返ってハッとする人も少なくないだろう。

だが全国でこうした現象が起きると同時に、食品ロスも増えたのはご存知だろうか。食料品の需要が高まるはずだけに、一見矛盾しているようにも思えるが、その実態は深刻だ。

例えば、緊急事態宣言で全国の学校が休校になると、ある農家は給食用に育てていた野菜を2.5トン近くも破棄せざるを得なかったという。多くの飲食店も休み、行き場を失った野菜や食材は増えていくばかりだ。

好き嫌いが全くなく、いただいた食事に感謝し、米粒1つ残さず食べるように教育されてきた筆者は、こうした食品ロスのニュースを聞くととても悲しくなる。以前アルバイトしていたファストフード店ではまだ食べられるものでも売れ残りは捨てるように指導され、毎回、罪悪感を覚えながらの作業だった。

店長に理由を聞いてみると、衛生面の問題上お客様には出せないため仕方ないと言われた。たしかに、店側としても基準を満たさない食品を売るリスクを負えないのは理解できるが、とても心苦しかった。だからこそ私は、個人的にまだ食べられるものは残さないようにしているし、形が悪く売れない食品や賞味期限が近く店頭に出せない食材をフードバンクに寄付する試みを応援している。

緊急事態宣言が39県で解除され、今月中には残りの8都道府県でも解除されることだろう。だが、ここで気を緩めたら第二波の到来を招きかねない。そうなれば、また買い占め現象が起きるだけでなく、さらなる食品ロスで生産者には多大な負担がのしかかる。

解除後はいつも以上に気を引き締めよう。今度スーパーに行く時には、家を出る前に、冷蔵庫の中にまだ使える食材がないかを確かめるようしたい。

参考記事:

17日付 読売新聞朝刊 27面(社会)「休校続き、給食用の野菜2・5トン廃棄…農家「心込めて育ててきたのに」