「私以外 私じゃないの 当たり前だけどね」。若手人気バンド「ゲスの極み乙女。」のヒット曲の歌詞の一部です。この続きを「だから マイナンバーカード♪」とした替え歌を甘利経済財政・再生相が披露し、26日の閣議後の会見に集まった記者団を驚かせました。斬新かつ面白いパフォーマンスですね。替え歌に出てきた「マイナンバーカード」。読者の皆さんはご存知でしょうか。私は、正直「名前ぐらいは聞いたことがあるけれど…」という程度でした。
マイナンバーとは、日本で住民票を持つすべての人に12桁の番号を割振る制度のことです。10月から国民に「マイナンバー」(社会保障・税番号)が届けられ、来年1月の利用開始を目指しています。納税、保険料の納付実績を管理し、徴収や給付の適正化に役立てることが狙いです。
便利に思えるマイナンバーですが、メリットばかりなのでしょうか。今朝の朝日新聞では富士通総研主席研究員の榎並利博さんと、弁護士の清水勉さんのインタビューが掲載されています。「住民票などの添付書類が行政手続きで不要になるといった便利さが強調されがちだが、現段階では大した利便性はない」と榎並さん。「確定申告や相続手続き、自動車売買などが楽になるよう利用領域を拡大すべきだ」と指摘します。
一方、「誰もが他人の個人データを集めやすい情報環境になることで、大量の個人データ流出事件が起こりうるのではないか」と清水さんは懸念しています。去年、ベネッセで起きた個人情報の流出事件は記憶に新しいですね。ベネッセの場合は外部に漏れた個人情報の範囲が限られていましたが、マイナンバーは住民票を持つ全ての人が対象になりかねません。
注目したいのは、このマイナンバー制度が国民にどれだけ知られているかという点です。今年1月実施の内閣府世論調査によると、制度について「内容まで知っていた」という人は28.3%で、「知らなかった」が28.6%です。知らない人の方が多いということですが、国民に番号が届けられるまで残されているのは4カ月ほどです。認知度が低いまま、予定通り番号を配られても、国民は困惑してしまうのではないでしょうか。
例えば、歌番組に出演して替え歌を披露する…。そこまではできないかもしれませんが、マイナンバーが国民の手元に届くまでにいかに認知度を上げるか。それが、当面の課題でしょう。
参考記事: 27日付 朝日新聞朝刊 (大阪10版)15面 (オピニオン)耕論「動き出すマイナンバー」
27日付 日本経済新聞朝刊 (大阪14版)4面 (政治)記者手帳「マイナンバー♪ 心に響くか」