「見せています」でいいのでしょうか?

25日に2014年衆院選の当選議員を対象とした資産等報告書が公開されました。「たくさん資産をもっている!」「ずるいかも」「羨ましい」「政治家って儲かるんだ」。新聞に載っている資産一覧を見たときの感想です。つい「政治家とカネ」の問題に結びつけて読もうとしていました。

無意識のうちに政治家の持つ資産を批判の対象にしている自分がいます。多く持っていると批判の的にされてしまうのなら、懐具合を公開したくない議員もいるでしょう。表面的な数字だけで判断するのは、冷静さに欠けるものです。でも数字だけしか知ることができないのも問題なのです。

議員は私たちが選挙を通じて送り出しました。ひとまず金銭面を含めた事実を受け入れることが求められます。だからといって、それは公開データを鵜呑みにすることではありません。そもそも、この制度はリクルート事件や東京佐川急便事件など金にからむ事件が相次いだことを受け、政治家が地位を悪用して不正蓄財をしていないか、有権者がチェックできる環境を整えるのが目的でした。客観的に評価するのに十分な内容でなければいけません。

アルバイトの給与明細書には支給額内訳が詳細に書いてあるので安心します。勤め先から支払額だけ示した封筒を渡されたら不安になるでしょう。勤務時間通りに支払われているのか、交通費は含まれているのか…。これらは数字だけみてもわからないです。

正直、自ら進んで報告書を読む人は少ないでしょうが、たとえ読んでも金額だけではよくわからない部分が残ります。私が知りたいのは「なぜその資産があるのか」です。数字ではありません。借り入れの時期や借り入れ先、目的、返済資金の調達先などです。国会議員資産公開法で報告書に記載が義務づけられているのは借入金の総額にとどまっています。きちんと当選議員を評価したいから、金額だけではない「説明付き」の公開が欠かせません。

「見せています」といっているだけで、実はなにも「見えない」政治はもうやめにしましょう。

 

参考記事:
5月26日付 朝日新聞 東京14版 衆院議員の資産公開から 3,4,38面
5月26日付 読売新聞 東京14版 衆院資産公開 2,12,13面