4月に開幕した大阪・関西万博は連日活況を呈しており、閉幕日である10月13日までのほぼ全ての来場予約枠がすでに埋まっています。
筆者は今月16日にあらたにすの合同取材で、翌17日には単独で会場を訪れました。今回は、文化や伝統といった観点から万博の様子をお伝えしたいと思います。
◯中国パビリオン
中国館は古代の記録媒体である「竹簡」をモチーフにした外観が特徴的です。竹簡には様々な書体で古典の一節が書かれています。
展示は古代文明の遺跡に関するものから「月の裏側の砂」に至るまで幅広く、「4000年の歴史」と超大国としての威信を感じさせる展示になっています。
映像も充実しており、エントランスに近い大型モニターでは春分や夏至、大寒など「二十四節気」ごとの季節の移ろいが色鮮やかなイラストで映し出されていました。
数ある展示の中でも特に筆者の印象に残ったものは、1日を約2時間の時辰に分けた「十二時辰」に沿って中国人の1日を紹介する映像でした。
そこではそれぞれの時辰における人々の生活が詳しく説明されており、例えば、「未の刻(13時から15時)」は半日の疲れを癒す時間、「戌の刻(19時から21時)」は一日で最も詩的で読書や観劇、散歩などでリラックスする時間であると紹介されていました。
機械的な時計の時間で動く現代人が忘れつつある悠久の時の流れを思い出させてくれる映像でした。
◯UAEパビリオン
アラブ首長国連邦(UAE)のパビリオンは空へと伸びるナツメヤシをイメージした柱が立ち並ぶガラス張りの建物です。
展示は独特な形をした短剣や真珠を採る際にダイバーが用いていた鼻栓などの他、現在注力している医療分野や宇宙開発分野に関するものなど多岐に渡っていました。
奥のモニターではラクダ飼いの女性や漁師の暮らしが映されており、オイルマネーで富がもたらされる以前のアラビア半島での暮らしを想起させる内容となっていました。
ラクダ飼いの女性が語った、「祖先の生活は美しかった」という言葉が印象的でした。
◯コモンズパビリオン
コモンズパビリオンには、独立した建物を持たない国々が20〜30カ国ほど集められています。日本ではあまり知名度の高くない国、紛争中で渡航できない国も出展していました。
土着の宗教の儀礼で用いられる像や色鮮やかな民族衣装、独特の音色を奏でる民族楽器など多種多様な展示が用意されており、一つの建物の中を歩くだけで多様な文化に触れることができました。
また、人と人との距離が近く、お土産の値引き交渉など、日本では経験できないような異国情緒を味わうことができました。
近代以降、工業が発達するにつれて伝統的な暮らしや文化は失われ、人々の暮らしは画一的なものになっているように感じられます。
おそらく大半の中国人は時計の示す時間に従って行動しているでしょうし、オイルマネーで発展したUAEのドバイやアブダビには現代的な超高層ビルが林立しています。
2日間の取材を通し、万博は失われつつある文化に目を向ける貴重な機会であると改めて実感することができました。
参考記事: