岐路に立つ世論調査 私の提言

新聞社やテレビ局、通信社は毎月世論調査を行い、内閣支持率や政策あるいは国内外の出来事に対する市井の声を集める。そこで示されたデータをもとに各メディアは次の選挙をにらんだ分析を進め、政治家や候補者は対策を練っていく。1945年の10月に始まったと言われる(西平重喜 1992)世論調査は今年で80年の節目となる。

しかし80年という年月のせいか、私の目には綻びが映る。特に、若年層の多いSNSとオールド層との乖離を肌でひしひしと感じている。そして、それらが一緒くたに語られることにこそ問題があると考える。

このことについて、2025年7月17日の日経新聞には面白い傾向を示した記事がある。自公の受け皿が年代別で全く異なるのだ。以下はその一部を引用したものである。

「18~29歳の投票したい政党は国民民主がトップで29%を占めた。参政が20%で続いた。30代は両党が拮抗する。40代になると参政が21%で国民民主の17%を上回った。参政は50代でも19%で投票先トップを保つ」

「60代以上になると自民党、公明党に入れる人の割合が増える。同時に非自公の受け皿は立憲民主党が最多となる。70代は自公が33%、立民が23%だった。国民民主や参政は1桁に沈む」

この記事に付けられたグラフを読み解くと、自公と立憲の二大政党に投票しようとしてる割合は年代によって大きな差異が見られる。10代、20代では合わせて約20%。30代では約18%。40代で約20%。しかし、70代ではこの数値が約50%。80代以上では65%もの人が二極のいずれかを支持していることがわかる。反対に若年層ほど右派政党への投票意欲が高い。10代20代における国民民主、参政党を合わせた数値は実に40%に迫る。

読売新聞7月26日の記事にも、世代間での大きな違いを示す記述がある。

「読売新聞社の全国世論調査で、参政の政党支持率は今年5月までは0~2%にとどまっていたが、参院選公示直前の6月27~29日調査で5%となって国民民主党と並び3位タイに」

「参院選後の7月21~22日調査では12%に上昇し、自民党(19%)に次ぐ2位となった。7月調査の年代別支持率は、18~39歳では20%で国民民主に次ぐ2位、40~59歳では15%でトップ。一方、60歳以上は5%で、自民、立憲民主、公明の各党を下回り4位だった」

これらの記事が示すのは、紛れもなく若い世代と中高年層では全く異なるイデオロギーを、考え方を持つということだ。若い世代ほど新興の右派勢力を支持し、逆に高齢層では組織票を活かすような旧来の政党を支える構図が明らかになった。これではいくら全世代から均等に統計を集めたとしても、国民の意識を必ずしも反映できないのではないかと疑念が残る。

そこで私は、世論調査を50代未満とそれ以上で分けることを提案したい。あるいは全ての世論調査で世代別の棒グラフ・折れ線グラフを示すことで違いが鮮明になるだろう。そしてメディア側には年代別・性別ごとでの支持率の開示をより一層進めることを求めたい。情報の開示によりメディアへの信頼を少しでも上げることができる。また、自社のみならず第三者の有志による分析からも新しい傾向などが見つかるかもしれない。SNSにAI…新たなテクノロジーが日々産まれてくる中でそれに適応していく形での世論調査の実施が実現するのかを今後注視したい。

参考論文

日本の世論調査 西平重喜1992

参考紙面

7月17日付日本経済新聞朝刊 非自公受け皿に世代差 若年層は国民民主、高齢層は立民 50代以下、8割超が野党支持

同26日付読売新聞朝刊 SNS利用者に外国人拒否感 参政躍進 世論調査分析