日本を訪れる外国人観光客の数は年々増えています。政府観光局によると、今年7月の訪日客は前年同月比4.4%増の約344万人(推計値)で、7月としては過去最高となりました。
観光客の増加は外貨をもたらし、地域経済を活性化させることが期待されます。
しかし、宿泊客数が増えなければ消費額は思うように伸びず、オーバーツーリズムのマイナス面ばかりが目立ってしまいます。
この問題に直面しているのが「日帰り観光地」です。
◯鎌倉市の現状
先日、筆者は神奈川県鎌倉市を訪れました。都心から電車で1時間程とアクセスが良く、関東を代表する日帰り観光地の1つとなっています。
名所が比較的狭い範囲に集中しており、5時間ほどの滞在でしたが、鶴岡八幡宮や大仏がある高徳院など4つの神社仏閣を巡り、名物の生しらす丼を食べることができました。
ただ、アクセスの良さとコンパクトさはインバウンド消費の取り込みの観点からはデメリットとなります。
「鎌倉市の観光事情〔令和6年度版〕」によると、2023年に鎌倉市を訪れた観光客は延べ1228万人程ですが、宿泊者数は約42万人にとどまります。
同じ神奈川県の人気観光地である箱根町は観光客数の約1951万人に対して宿泊者数が約394万人となっており、鎌倉市の日帰り率の高さが見て取れます。
◯日帰り客とオーバーツーリズム
日帰り客の多さは、観光客による消費の伸び悩みを招きかねません。
先ほどの「観光事情」によると、1人当たりの観光消費額は宿泊客の場合3万1409円ですが、日帰り客では7773円にとどまります。
オーバーツーリズムを回避しつつ地域経済を活性化するためには、一人ひとりの滞在時間を伸ばし、宿泊客を増やすことが効果的と言えるでしょう。
◯滞在に価値を
宿泊客を増やすにはどうすれば良いのでしょうか。
大都市からのアクセスや観光スポットの立地は容易に変えることができないため、滞在そのものに価値を与える必要があります。
例えば、星野リゾートが運営する「OMO5小樽」では、季節ごとに小樽運河を活用した宿泊客限定のクルージングを提供しています。
小樽市は札幌から電車で40分ほどの位置にあり日帰り客も多いですが、宿泊そのものに価値を持たせることで滞在時間を伸ばすことが期待されます。
こうした体験重視の宿泊施設は各地でみられるようになっています。
観光客が急速に増えたとしても、観光消費が伸びなければ地域経済は潤わず、オーバーツーリズムの副作用ばかりが目立ってしまいます。
持続的な観光立地を実現するためにも、宿泊客増に向けた取り組みは必要不可欠となっています
参考記事:
日経電子版「北海道・小樽運河100周年 夜を盛り上げ宿泊客拡大 地域のチカラ 街のイノベーション」(2023年12月24日)
参考資料: