ブーム再燃中のアサイー アマゾンに与える影響とは?

アサイーヤシは南米のアマゾン地域に自生するヤシ科の植物であり、その実は抗酸化成分や栄養素を豊富に含むため、「スーパーフルーツ」とされています。昨今では、アサイーの果肉をスムージー状にしてフルーツやグラノーラ、はちみつなどをトッピングした「アサイーボウル」の人気が高まっています。気軽に飲むことのできる紙パックタイプのスムージーは、計画に対して約2倍の需要の売れ行きとなり、出荷を一時休止しているほどです。筆者の大学内のカフェテリアにおいても、「アサイーボウル」が提供されています。

アサイーの生産は、南米のアマゾン地域の自然環境、そこで暮らす先住民コミュニティに大きな影響を与えています。AFPBB News の記事によれば、最大の生産量を誇るブラジルでは、アサイー栽培が農家に経済的な恩恵をもたらした一方で、アマゾンにおいて他の植物からアサイーに置き換えられる「アサイー化」が進行すれば、生物多様性が損なわれる恐れがあると指摘されています。そのため今後、アグロフォレストリーのような持続可能な農業を模索する必要があるでしょう。アグロフォレストリーとは、農業を意味する「アグリカルチャー」と林業を意味する「フォレストリー」を組み合わせた語であり、農作物生産および土地管理システムにおいて樹木を利用する農業手法を指します。エクアドルのアマゾンでは、チャクラ農法と呼ばれる先祖の知恵を受け継いだアグロフォレストリーが活用されており、2023年には国連食糧農業機関(FAO)により「世界農業遺産」に認定されています。筆者はエクアドルに滞在した際に、チャクラ農法を見学する機会を得ました。カカオやコーヒー豆のような商業価値の高い作物だけではなく、多様な植物を栽培することで、より豊かな土壌を持続可能的に維持することを可能にしていました。

ボリビア北部のポルベニール先住民族コミュニティでは、アサイーヤシの木を伐採してパルミット(ヤシの芯)を販売していましたが、FAOの支援を受けてアサイーヤシの実であるアサイーバリューチェーンの構築に取り組みました。その結果、ヤシの木を伐採することなく、収益を得て生活水準を向上させることに成功しました。ただ収穫した作物を売るのではなく、作物を市場のニーズに合わせて加工したり、作物を用いた製品を生み出したりすることで、生産作物の付加価値化を推し進めたのです。その過程で、これまで受け継がれた先住民の知恵や伝統が生かされています。

地球の裏側から海を渡って日本に届けられるアサイー。その小さな実には、アマゾン先住民の伝統を生かした持続可能な農業開発の可能性が詰まっています。

 

参考記事:

7月27日付 FAO en Bolivia “Asaí de altura, La Paz se suma a la producción nacional del súper fruto amazónico”

7月8日付 伊藤園「アサイーボウル」飲料の出荷休止 計画比2倍の需要で:日本経済新聞

3月21日付 FAO en Bolivia “El cultivo que da impulso a la baya de moda”

2024年2月12日付 FAO Agroforestry “The Amazonian Chakra, a traditional agroforestry system managed by Indigenous communities in Napo province, Ecuador”

2023年9月17日付 「アサイー」栽培拡大、生物多様性損なう恐れ ブラジル・アマゾン:AFPBB News

編集部ブログ