街に現れるヒグマ どう備えるか

山や森が街の近くまで広がり、固有の動植物が数多く存在する北海道。その豊かな自然は多くの人を魅了してきました。

しかし、自然の近さは時に人々の生活にとって深刻な脅威ともなりかねません。それが体長2メートル前後のヒグマともなれば人命に関わります。

 

◯福島町で男性襲撃

今月12日未明、道南の福島町の住宅街で新聞配達中の男性がヒグマに襲われて死亡する事故が起こりました。同町では4年前にも山林で女性が襲われて死亡しています。

事故後も出没が相次ぎ、町内では警戒態勢が敷かれていましたが、18日にハンターによって駆除されました。

 

◯都市部でも相次ぎ出没

ヒグマの出没は、200万近い人口を抱える大都市である札幌でも相次いでいます。

21年6月には、札幌市東区で男女4人が襲われ重軽傷を負いました。現場はイオンモールなどの商業施設も混在する住宅街であり、同区へのヒグマの出没は札幌市制が始まった1922年以来初めての事態でした。

都市部に出没する熊は「アーバン・ベア」と呼ばれ、社会問題となっています。

 

◯衝突を減らすには

ヒグマと人間との軋轢を緩和するにはどうすれば良いのでしょうか。

札幌市が23年に策定した「さっぽろヒグマ基本計画2023」では、主な取り組みとして①電気柵の普及、②河川敷の草刈り活動、③放棄果樹伐採活動、④ごみの管理、⑤啓発が挙げられています。

①と②は、侵入を物理的に妨げる対策です。特に河川沿いの茂みはヒグマの通り道となっているとされ、山間部と市街地を結ぶ経路を断つことで事故の発生を未然に防ぐことにつながります。

③と④は、市街地へ進出する誘因を排除する対策です。ヒグマは雑食性の動物であり、果物や生ごみなどを食べ、その味を覚えてしまうと、再び食料を求めて市街地へ現れる恐れがあります。福島町の事故の際も、スーパーのごみ置き場が荒らされるという事案が発生しました。

 

ヒグマは危険な動物ですが、適切な対策を取ることで事故を予防することができます。ごみの管理などは私たちでも明日から行える対策です。日々の心掛けが人間と自然との共生につながります。

 

参考記事:

7月20日付 読売新聞朝刊29面(社会)「駆除クマ 男性襲撃の個体 DNA一致 4年前女性襲う 北海道・福島」

7月13日付 朝日新聞朝刊23面(道内)「ヒグマ襲撃「あっという間」 福島の住宅地 新聞配達員死亡」

2021年6月19日 読売新聞朝刊22面(道社B)「住民背後 クマ突進 札幌4人重軽傷 150キロ超の巨体=北海道」

 

参考資料:

札幌市「さっぽろヒグマ基本計画2023」