昨今、物価の上昇が著しく、今回の参議院選挙でも物価高対策は多くの注目を集めています。帝国データバンクのデータによると、7月の飲食料品の値上げは2105品目に及び、上げ幅は平均で15%でした。一方、物価の影響を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は5月時点で前年同月より2.9%減り、5カ月連続のマイナスとなりました。朝日新聞は、物価高に賃上げが追いついていない状況だと報じています。
物価高に悩まされる現在、「食」にとどまらず支援の形を拡大しつつある「子ども食堂」の存在が注目を集めています。そこで今回は「空き家バンク京都 子ども食堂」スタッフの井上さんと吉浪さんにお話を伺いました。
【「空き家バンク京都 子ども食堂」が出来るまで】
代表を務める井上さんと平木さんは双子であり、「子どもと関われる何かを二人で何か立ち上げたいね」と考えていました。そんな中、偶然出会った「空き家バンク京都」の鈴木一輝代表に話したところ、レンタルスペースを貸してくれることになりました。これをきっかけに、1か月後の2022年6月に子ども食堂の運営をスタート。7月に開催した第1回子ども食堂の参加者・スタッフは、知り合いを中心に50人ほど。コロナ禍だったこともあり、パーテーションを立てての開催や、弁当の持ち帰りなどで感染防止に努めました。現在大学2年生の吉浪さんは、小学生の時に子ども食堂を利用したことをきっかけに、運営として関わりたいと思うようになったそうです。Xで井上さんらの活動を見つけ連絡したことを機に、活動を始めました。
【主な活動内容】
主に4つの活動が行われています。
1.子ども食堂
年間15回、各100名の予約制です。基本的には月に1回で、春休みや夏休みといった長期休暇の期間には回数を増やしています。食事だけでなくイベントも行われています。筆者が取材した6月28日には七夕にちなんだゲームが催されていました。
▲子ども食堂の様子
(6月28日 筆者撮影)
2.フードパントリー
寄付された食材の中に賞味期限や消費期限が近いものがあるときに開催しています。必要な人に持ち帰ってもらいます。
▲お米やお菓子、日用品などが揃うフードパントリー
(6月28日 筆者撮影)
3.子どもカフェ
365日運営しています。常駐スタッフが食事を作り、朝・昼・晩、毎日子供たちが20名ほど訪れます。地域密着型で「みんなでご飯を食べること」を大切にしています。
4.ひとり親支援
ひとり親家庭を対象に弁当や日用品を配布しています。
【運営における課題】
大規模なイベントを開催している「空き家バンク京都 子ども食堂」ですが、資金面で課題があるそうです。やりたいイベントがあったとしても、助成金や企業の後援なしでは開催が難しくなってしまいます。このような状況を防ぐためにも井上さん自ら営業に回り、企業の方々に取り組みを知ってもらうことを大切にしています。
井上さん
自分たちでの調理が難しい部分があるため、お弁当を提供している企業に直接出向いて交渉し、協力してもらっています。活動に共感していただき、無償で提供してくださったり、現金の寄付をしていただけたりと非常にありがたいです。
取材日に提供されていたカレーや弁当、パントリーも企業や個人の方から寄付されたものです。協力してくれた企業の情報もSNSで発信しています。
▲協力企業をSNSで発信
(6月28日「空き家バンク京都 子ども食堂」Instagramから)
【「空き家バンク京都 子ども食堂」ならではの魅力】
「空き家バンク京都 子ども食堂」ならではの魅力についてお聞きしました。
1.若さ
井上さん
若さを活かした子ども食堂が私たちに合ったスタイルです。ボランティアに来てくれている大学生たちのやりたいことを聞き、イベントに活かしています。利用者だけでなく、ボランティアも輝ける場所づくりをしています。
筆者が取材した際も、立命館大学の国際ボランティアサークルSOINJAPANがボランティアとして参加していました。8月には学内で自由研究の学習イベントを開催することが決まっているそうです。豊富なイベントも魅力の一つです。
2.広報活動
吉浪さんと平木さんがSNS運営やチラシ、イベント企画をメインで行っています。
井上さん
活動を多くの人に知ってほしいとの思いで、広報活動にはかなり力を入れています。
吉浪さん
季節感を大事にしたイベントをしています。今回のテーマは「七夕」。子供が一人ではなく、大学生や他の参加者と一緒に出来る遊びを考えています。
▲七夕ゲームの様子
(6月28日「空き家バンク京都 子ども食堂」Instagramから)
▲チラシ
(6月28日「空き家バンク京都 子ども食堂」Instagramから)
2023年には読売新聞でも取り組みの様子が掲載されました。広報活動に力を入れていることで、SNSや新聞を見てくれた方からの問い合わせや寄付が増えたそうです。
【子ども食堂運営の喜び】
子ども食堂を運営していく中での喜びについてお話を伺いました。
井上さん
こうして対面のイベントを何度も開催し、沢山コミュニケーションをとっていく中で、「井上さん」と名前で呼んでくれたり、手を振ってくれたりすることが嬉しいですね。
吉浪さん
3年間活動を行っていく中で、会場を借りる際に「空き家バンク京都 子ども食堂の…」と電話すると「知っています」と言ってくれる人が増えました。少しずつ知名度が上がってきたことで協力してくれる人も増えました。
7月19日には「夢の子ども食堂ファッションショー」が開催されました。このイベントは新聞紙やごみ袋を使って作った衣装を着て、子供たちや現役モデルさんがランウェイを歩くというものです。
井上さん
元々繋がりがあったのは1人のモデルさんだけだったんです。しかし、その方が「周りのみんなにも声をかけてみる」と言ってくれ、この日の為に自費で北海道や海外から来てくれる方もいます。心無い言葉に心折れる時もあるけれど、子供たちのために、という共通の気持ちの人達が集まってくれることが本当に有難いです。
【これからの子ども食堂】
現在の目標、目指していきたい姿について教えていただきました。
井上さん
今の場所だけでなく、他にも拠点を持つことで、より多くの人たちにアプローチしていきたいですね。
吉浪さん
将来は小学校の先生と子ども食堂を立ち上げること。支援を求めている人のところに、こちらからアプローチできる子ども食堂を作りたいです。
より沢山の人に知ってもらい、モノだけでなく経験という支援も提供できればと思っています。
最後に読者の方々に伝えたいメッセージを井上さんにお願いしました。
子ども食堂は、ひとり親家庭や貧困家庭の人が利用するもの、というイメージがあるかもしれませんが、誰でも来ていいんです。まずはどんな活動をしているのか、どんな人が来ているのか、実際に見に来てほしいです。
お忙しい中、取材にご協力いただき有難うございました。
「空き家バンク京都 子ども食堂」の各種SNSは下記からご覧いただけます。
【ホームページ】
https://akiya-bank.org/kodomosyokudo/
【Instagram】
https://www.instagram.com/akiyabank_kodomosyokudo/
【X】https://x.com/kodomo_shokudo_?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
参考記事
2023年7月21日付読売新聞 「[きょう人十色]子ども支援 循環期待 鈴木一輝さん34=京都」https://yomidas.yomiuri.co.jp/yomiuri/articles/8794265
2025年7月18日付朝日新聞 「2025参院選 課題の現場から)所得が上がる政策、望み託す 物価高、生活に追い打ち/」https://xsearch.asahi.com/kiji/