進む女子大の共学化 学生の本音を問う

6月17日、武庫川女子大学(兵庫県西宮市)を運営する学校法人が、2027年度から同大学を共学化する方針を発表しました。全国最大規模の女子大が共学化へと舵を切ったことは、在校生や卒業生に大きな衝撃を与え、見直しを求めるオンライン署名には、7月15日時点で5万筆を超える署名が集まるなど、その波紋は広がり続けています。

共学化の見直しを求めるオンライン署名サイトのページ(2025年7月15日、筆者撮影)

近年、全国の女子大では共学化や他大学との統合、学生募集の停止といった動きが相次いでおり、女子大そのものの存在意義が問い直されています。

日本で女子大が設立された背景には、戦後の学制改革があります。戦前、旧制大学は原則として女性の受験を認めず、高等女学校を卒業した女性は、女子高等師範学校や専門学校で高等教育を受けていました。しかし、1948年に国内の女子専門学校のうち5校が新制大学として認可されたことで、日本初の女子大学が誕生し、女性が高等教育を受ける道が広く開かれることになりました。

その後、男女平等が重視される社会になり、女子大は女性の社会進出を支える役割を担ってきました。看護、栄養、教育、国際関係などの専門分野に特化した学部・学科を設置し、女性リーダーの育成に力を注いできました。また、共学大学と比較して小規模な学校が多く、教員との距離が近い少人数教育も特色です。異性の目を気にせず学びに集中できる環境も、女子大ならではの強みと言えるでしょう。

しかし今、大きな転換期を迎えています。最大の課題は、少子化に伴う18歳人口の減少です。大学全入時代といわれる今、学生の確保はどの大学にとっても喫緊の課題であり、女子大も例外ではありません。さらに、女性の社会進出が当たり前になったことで、人文・家政系が中心の女子大よりも、理系や情報系などより実践的な専門分野をもつ共学大学を選ぶ人が増えていることも、女子大の存続に影響を及ぼしています。

 

この問題は、東京都内の女子大に通う筆者にとっても決して他人事ではありません。武庫川女子大学の共学化のニュースを知ったとき、「自分の母校はどうなるのだろう」という不安とともに、「今、女子大で学ぶ意味とは何か」という問いが浮かびました。

そこで筆者は、自身が通う大学の学生に女子大の共学化について意見を聞くため、SNSを通じてアンケートを実施し、6名から回答を得ました。まず、共学化の動きをどのように受け止めているか尋ねたところ、「異性がいないから安心して入学したのに、共学化されると女子大を選んだ意味がなくなる」という意見や、「男性に苦手意識のある女子にとって、女子大のような環境が少しでも残っていてほしい」という切実な声が寄せられました。また、「共学の大学が存在している以上、女子大を無理に共学化する必要はないのではないか。共学を望む人は、最初から共学の大学を選べばよい」という意見も見られました。

次に、女子大で過ごす中で得た経験について質問すると、「服装やメイクを気にせず勉強に集中できる」「自分の意見を恐れずに発言できる」「リーダーシップとフォロワーシップをバランスよく学べる」といった、女子だけの環境ならではの利点を挙げる声が多く聞かれました。こうした意見から、女子大は、学生一人ひとりが安心して自己を表現し、主体的に成長できる場として機能していることが浮かび上がってきます。

 

では、女子大はこれからどうあるべきなのでしょうか。たしかに、共学化の波は今後も続くかもしれません。しかし、単に男女を受け入れるのではなく、女子大がこれまで培ってきたアイデンティティや特色をどのように継承し、新しい時代に適応させていくかが問われていると私は考えます。在校生の声が示すように、女子大には、個性が尊重され、学生同士が共に学び合う文化が根付いています。このような環境を守りつつ、社会に開かれた新しい大学像を模索していくことが、今後ますます重要になるでしょう。

これからも女性が輝き、社会に貢献できる人材を育成する場であり続けるためには、カリキュラムの改革やきめ細やかなキャリア支援といった取り組みを通じて、その存在意義を明確に示す必要があります。さらに、SNS等を活用して学生自身が自らの経験を積極的に発信し、女子大の価値を広く伝えていくことも、存続に不可欠な要素になると私は考えます。

 

参考記事:

6月17日付 読売新聞朝刊(東京14版)28面(社会)「武庫川女子大共学化へ」

6月17日付 日経電子版 「武庫川女子大学が2027年度に共学化 全国最大規模、名称も変更

 

参考資料:

武庫川女子大学「【共学化】武庫川女子大学の共学化について

Change.org「武庫川女子大学の共学化の決定:反対と一時停止を求めます

朝日新聞デジタル「(いちからわかる!)女子大ができた経緯は?