なんで切ったの 消える街路樹

「もう少ししたら、紅葉きれいやろうね」。数年前、地元山口県で色づき始めた街路樹のアメリカフウを眺めて母とそう話しました。その数日後、枝は短く切られ、葉は全てなくなっていました。変わり果てた姿に言葉を失うほかありません。 

最近では、樹木の老化による倒木、台風による枯れ枝落下といった街路樹による人的被害リスクも高まっています。5月13日の日本経済新聞によると3年半で人的・物的被害は1700件、倒木は年5200本に上ると言います。 

街路樹は管理、維持のコストの問題も抱えます。宮崎県では南国を象徴するワシントニアパームが街路樹として広く植えられています。1960年代から植栽が始まり、剪定するには高すぎる20mを越す木も多くなっており、約60年をかけて植え替えをしている最中です。一本の植え替え費用は約100万円と莫大な費用がかかることは容易に想像できます。 

宮崎県で植え替えといった対応が進む一方で、山口県周南市では2020〜22年度に、県道の中央分離帯に伸び伸びと生え、地域の象徴的存在だったワシントンヤシが50本撤去されました。安全性を考慮してのことです。 

幼い頃から見慣れた風景や思い出の一部でもある街路樹は、老化や自然災害、管理不足で最悪の場合、人を傷つけ、時には命を奪う事故を引き起こしかねません。一方、安全性をAIで解析するシステムが登場しています。管理の効率や精度を上げれば、街路樹が持つ景観保全や、環境保護などの利点により目を向けられるのではないでしょうか。 

丸刈りになった地元の木も撤去は免れました。また紅葉を見せてくれるためにしっかりと管理されているのだと少し前向きに受け止めることもできるかもしれません。 

 

参考記事 :

2017年7月5日付 朝日新聞デジタル 宮崎)ワシントニアパームの苗木の植え替え始まる  https://www.asahi.com/articles/ASK744664K74TNAB00G.html 

2023年2月24日付 朝日新聞デジタル ヤシ並木の植え替え、今年度の作業終了「南国」の象徴 

https://www.asahi.com/articles/ASR2R72P0R2RTNAB004.html 

2025年5月13日付 日経電子版 突然倒れる街路樹、年5200本 植樹ラッシュから半世紀で寿命も 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE30BND0Q5A430C2000000/ 

2025年4月27日付 市街地の「街路樹」倒れる恐れある老木や臭うギンナン、安全と景観どう両立…山口県周南市「伐採も必要」 

 https://www.yomiuri.co.jp/member/scrap/20250427-OYTNT50033 

2025年6月18日付 文明開化の象徴だった「街路樹」、突然倒れる事故相次ぐ…街から撤去の動きも 

https://www.yomiuri.co.jp/member/scrap/20250617-OYT1T50213