駅にいると聞こえてくる「ピーン・ポーン」という音。時には小鳥のさえずり音が聞こえてくる時も。一定の間隔で繰り返されるその音は「盲導鈴」と呼ばれ、視覚に障がいのある方に駅の改札口や建物の入り口などの位置を知らせるものだそうです。
この誘導サインは1976年にから使われるようになりました。当初は点字図書館など限られた施設の周辺に設置されていましたが、その後、駅などでも使うようになったそうです。視覚障がい者への設備といえば、黄色い点字ブロックが一番に思い浮かびますが、普段聞き流していた音が安全な移動を支える大きな役割を果たしていることに驚きました。
音に工夫がなければ騒音に紛れて誘導サインは意味を為しません。そこで、隣接するホームでの放送の音色を変えています。16年の日本経済新聞の記事によると都営地下鉄は駅の近くにいる鳩やスズメの鳴き声は使わず、日本野鳥の会から提供されたウグイスやカッコウ、ホオジロの声を利用しているそうです。知らなければ分からない細かな音の工夫は、気づかぬところで誰かの安心に繋がっているのです。
駅に限らず、横断歩道では地域独自のメロディーや鳥の鳴き声が聞こえてきます。しかし、地域ごとの違いが混乱を招かないように、多くの信号機が鳥の鳴き声方式を採用するようになっています。23年の読売新聞の記事によると福岡県ではかつて260ヶ所を超える横断歩道で「通りゃんせ」などのメロディーが使われていましたが、61ヶ所に減少したそうです。幼い頃、祖父母と散歩した時に聞いていたあのメロディーを耳にしなくなったのも納得です。
誘導サインと知らず騒音として苦情を言う人もいる中で、全ての人が安全かつ快適に過ごすために公共施設や交通機関では音の試行錯誤が続いています。さまざまな障害を持つ方々、その地に不慣れな人、誰もが盲導鈴に限らず、音声ガイドやピクトグラムや多言語表記など多くの優しさに触れています。普段、見過ごしている身の回りの何かが私たちを含む誰かの生活を大きく支えているかもしれません。
参考記事:
2016年7月30日付 日経プラスワン「駅でホーホケキョ♪「音サイン」東京五輪へ進化」
2023年8月16日付 読売新聞オンライン「信号機の「音」、「通りゃんせ」から「ピヨ」「カッコー」に統一…視覚障害者の要望で」
参考資料:
経済産業省 「公共施設における誘導用音サイン」に関する国際規格が発行されました
国土交通省 バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)【分割版】第2部 旅客施設共通ガイドライン 2.誘導案内設備に関するガイドライン
西日本旅客鉄道株式会社 駅のご利用 「駅のホーム上で、鳥のさえずりのような音またはピンポン音が鳴っているが、何のために流しているのか」