女性の視点を取り入れた災害支援を

「地震大国」と言われる日本。私達は常に大きな災害に遭遇する危険と隣り合わせにあります。

 

能登半島地震の復興ボランティアに参加した女性の知人から、以前「女性の避難生活は想像以上に大変そうだった」と聞いたことがあります。その言葉が忘れられず、実態を調べました。

 

日本経済新聞が内閣府のデータをもとに行った分析では、南海トラフ巨大地震の被害が想定される自治体の6割で、簡易トイレなどの主要8品目のいずれかがゼロという結果になりました。ここでの主要8品目とは、食料、毛布、乳児用粉・液体ミルク、子供用おむつ、大人用おむつ、携帯・簡易トイレ、トイレットペーパー、生理用品を指します。いずれも避難生活を送る上で必要不可欠な存在です。災害の発生は予測できないからこそ早急な準備が求められます。

 

実際、能登半島地震では、生理用品や粉ミルクが不足していたことが報告されています。中には「生理用品の不足について男性職員に意見を言いづらい」という声も上がっていました。

 

また、体育館の雑魚寝では女性は着替えが難しいという問題もあります。昨年4月に台湾・花蓮市で発生した地震の際は、発生後2時間で避難所にテントが設置されていました。台湾が災害時にすぐに対応できる理由は、迅速な官民連携体制の構築にあるとされています。着替えの問題に限らず、女性や子供が避難所で性被害に遭うことを防ぐためにも、プライベート空間の確保は非常に重要です。

 

女性の声を取り入れようとする動きは今に始まったことではありません。高知市では2012年に女性だけでつくる防災検討委員会を立ち上げています。また、研究者や女性支援団体でつくる「東日本大震災女性支援ネットワーク」(東京都文京区)では同年6月から自治体職員や住民向けの研修を開くなど、防災計画に積極的に女性の視点を取り入れる取り組みをしてきました。

 

しかしながら内閣府の調査では、23年12月時点で全体の57.4%にあたる997の自治体で防災担当部署の女性職員が「ゼロ」であったことが明らかになりました。また、市区町村の災害対策本部会議に出席する幹部クラスの女性職員の割合の調査も行われ、全国平均で9.5%にとどまる結果となりました。まだまだ女性の声が届きづらいのが現状です。

 

これらの結果を受け、徳島県板野町では、女性消防団員が備蓄倉庫を点検しました。生理用品の不足に気づき、買い足しを行うことが出来たそうです。男性職員の気づきにくい点を女性職員が補っていくことで、性別を問わず、全ての人の精神的、身体的な負担を減らすことができるのではないでしょうか。

 

京都市防災ポータルサイトでは『KYOTOわたしの防災ノート』が公開されており、災害時の経験や対処法、女性が選んだ防災グッズ等が紹介されています。

 

これを機に防災グッズの中身を見直して不足品を補充し、まずは自分の安全を守る備えをしていきたいです。

 

 

 

参考記事

 

日経新聞デジタル 「南海トラフ避難、『備蓄ゼロ』の自治体6割 主要8品目のいずれか」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE01BX00R00C25A5000000/

 

読売新聞オンライン 「発生後2時間でテント!無料マッサージも…台湾が地震ですぐに動ける理由」https://www.bosai.yomiuri.co.jp/biz-article/13855

 

2013年1月17日付 朝日新聞 朝刊30面 「避難所に女性の視点を トイレ・着替え・下着の洗濯・子育て…運営体験で課題発見」

 

2025年3月8日付 群馬 東京朝刊 群馬2 26貢 「避難所女性配慮 防災マニュアル 高崎市が作成=群馬」

 

2025年4月16日付 読売新聞 徳島 大阪朝刊 徳島23貢 「[阿波ノート]女性視点 防災に生かす=徳島」

 

 

 

参考資料

 

京都市防災ポータルサイト 「KYOTOわたしの防災ノート(女性視点で『暮らすように,備える』)」https://www.bousai.city.kyoto.lg.jp/0000000515.html

 

NHK 「自治体の防災担当部署 女性職員『ゼロ』6割近く 内閣府調査」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240627/k10014493231000.html