先月29日、アメリカの第2次トランプ政権が発足から100日の節目を迎えました。
1期目から政界のアウトサイダーとして歯に衣着せぬ物言いと強力なリーダーシップを見せていましたが、2期目は前期以上に矢継ぎ早に独自の政策を打ち出しているように見受けられます。
今回は、第2次政権の特徴を前期との比較も踏まえながら振り返ります。
◯側近に忠臣
注目すべきは主要閣僚などの政権メンバーの顔ぶれです。
第1次政権では、副大統領に政治経験の豊富なペンス氏を、国防長官に軍幹部を務めたマティス氏を起用するなど、共和党主流派への配慮や実務経験を考慮した顔ぶれとなっていました。
しかし、現政権のメンバーにはトランプ氏の考えに近い「忠臣」が揃っており、中には閣僚としての素質に疑問があると言われる人物も含まれています。
副大統領のバンス氏はトランプ氏に主張が近いとされ、ウクライナのゼレンスキー大統領との口論やミュンヘン安全保障会議での欧州批判など、挑戦的な発言でも注目を集めています。
他にも、国防長官にはトランプ氏に親しい元テレビ番組司会者のヘグセス氏が、厚生長官にはワクチン懐疑派のケネディ氏が就任するなど、前期以上に大統領の意向を反映した顔ぶれとなっています。
◯矢継ぎ早の政策
トランプ氏は大統領に返り咲いて以降、前期以上に大胆な政策を矢継ぎ早に打ち出しています。
就任初日には大量の大統領令に署名し、EV促進策の撤回やパリ協定からの再離脱などを指示しました。
また、新設した政府効率化省(DOGE)の事実上のトップにテスラのイーロン・マスク氏をあてて政府職員の大規模なリストラを主導させるなど、官僚機構の大胆な改革にも乗り出しています。
ただ、行き過ぎたリストラは統治機構の弱体化をもたらしかねませんし、黒人や女性の高官を排除する人事は多様性・公平性・包括性(DEI)の理念を蔑ろにしているとの反発も招いています。
◯世界を混乱させた相互関税
今最も世界が注目しているのは関税・通商政策ではないでしょうか。
先月2日、トランプ氏は米国への輸入品に一律で10%の関税をかけ、一部の国・地域にはさらに上乗せした税率をかけると発表しました。相互関税の導入は海外輸出が収益の多くを占める日本メーカーの業績に悪影響を与えかねず、日経平均株価は一時31,000円台まで落ち込みました。
今月1日に日米間で2回目の閣僚協議が開かれるなど追加関税回避への努力は続けられていますが、未だ結論は見えず、予断を許さない状況が続いています。
今期のトランプ政権を見て改めて痛感したのは、アメリカという超大国とそのトップである大統領の影響力の大きさです。グローバル化が進んだ現代社会にいる私たちは、日本国内にいても世界の動向を意識して注視しなければなりません。
参考記事:
4月30日付 読売新聞夕刊1面「政権100日「常識の革命」 関税・移民 トランプ氏誇示」
4月30日付 朝日新聞朝刊2面(総合2)「トランプ大統領就任 記者が見た100日」
日経電子版「トランプ政権が相互関税、日本24% EU 20%・中国34%」(2025年4月3日)
日経電子版「米政府7万人退職へ 効率化省、歳出抑制は目標遠く」(2025年2月22日)
日経電子版「パリ協定離脱・移民… トランプ氏署名の大統領令一覧」(2025年1月21日)