地震と事故 どちらを報道する

2024年は、大きな混乱から始まった年でした。1月1日、石川県能登半島で最大震度7の大地震が発生し、翌2日には東京羽田空港で、日航機と海上保安庁の航空機が滑走路上で衝突するという事故も発生しました。

テレビやラジオではライブ中継で地震、事故の様子を放送していましたが、新聞にそれらに情報が載ったのは1月3日の朝刊です。2日は新聞休刊日でした。そのため各社は、能登半島地震と旅客機事故のどちらか一つをメインに3日の紙面をつくらなければなりません。では、あらたにす運営の3社(朝日・読売・日経)の1月3日付の一面は、どの記事をメインに取り扱ったのでしょうか。

新聞のレイアウトは、読者の目に入りやすい部分に一番伝えたいニュースを置いています。位置でいうと右上が最も目につく「アタマ」と呼ばれ、2番目は左上の「カタ」です。つまり、1面の右上の記事がその日に選んだ最も重要なニュースということです。

まず朝日新聞は、能登地震の記事をアタマに据え、大見出しを掲げました。割合としては1面の7割程度を占めています。旅客機事故は左側のカタに寄せられています。文章量も地震の記事の方が多くなっています。

それに対して読売新聞、日経新聞は旅客機事故がトップです。しかし、両社は朝日新聞ほど大きくスペースを取らず、読売新聞は1面の半分程度、日経新聞は地震の記事と絡めながら、こちらも半分くらいの分量でした。3社の共通点として、コラム欄(「天声人語」、「編集手帳」、「春秋」)はどの社も能登地震を絡めた内容で、旅客機事故について触れた社はありませんでした。

皆さんが編集者だったら、どちらの記事をアタマに載せるべきだと思いますか。

私は旅客機事故の記事だと考えました。地震のような災害で求められるのは速報性です。災害ニュースでは情報がたびたび更新され、一日前の話ではかなり古くなってしまいます。地震に比べて、旅客機事故は発生してから間もないため、優先して報道するべきだと考えました。

新聞、ラジオ、テレビ、SNSなど、様々なメディアが情報を発信するからこそ、それぞれの強みを生かした情報を届ける必要があります。明日の紙面で何がアタマなのか、そしてNHKはどんなニュースを最初に伝えるのか。日々の報道を見比べると、各社の価値判断が浮かび上がってきます。

 

参考記事

2024年1月3日付 各紙朝刊一面 「能登半島地震」「日航機衝突事故」関連記事

NHKホームページ「経営に関する情報」https://www.nhk.or.jp/info/pr/bousai