今月1日、2026年春に卒業予定の大学3年生や大学院1年生を対象とした採用説明会が解禁されました。筆者のメールアドレスにも多くの企業から選考日程の案内が届き、就活もいよいよ佳境に入ると身が引き締まる思いがします。
ただ、深刻な人手不足を背景に採用競争が一段と激しくなるなかで、政府のルールは年々形骸化。筆者を含め、多くの学生が就活解禁以前から内々定をもらっています。
学生優位の「売り手市場」が続くことで、就活の実態は急速に変化しつつあります。
◯現在の採用ルールは?
就職活動の早期化による学業への影響を抑えるため、政府は就活日程に関するルールを定め、経済団体などに対して遵守を要請しています。
現行のルールでは、卒業・修了前年度の3月1日に広報活動を開始し、卒業・修了年度に入った6月1日に採用選考活動が始まることになっています。ニュースなどでよく見る「就活解禁」とは、採用説明会の実施といった就活生向けの広報活動の解禁を指しています。
ただ、このルールに罰則などの強制力はなく、多くの企業が優秀な学生を確保するため採用スケジュールの前倒しを進めています。
◯早期化の影響
選考の早期化にはメリットとデメリットの両面があります。
学生にとって、早い段階で内々定を貰うことは大きな安心材料になります。しかし、早く就活を終えようと入社先を安易に決めてしまうと、いざ入ってから企業とのミスマッチに気づくことになりかねません。
また、情報収集を怠ると、気づけば募集が終了していたという事態に陥る恐れもあります。筆者の周りでも政府のルールを念頭において準備をしている学生を見かけますが、企業によっては手遅れとなってしまうこともあり、従来の常識にとらわれない姿勢が必要でしょう。
企業にとっては、求める学生と早い段階で接点を確保できる利点があります。しかし、内々定の通知日と入社日までの期間が長ければ1年以上に及ぶこともあり、学生から内々定を辞退される可能性が高まるリスクが伴います。
◯相次ぐ初任給の引き上げ
学生確保に向けた動きは待遇面にも表れています。
損害保険最大手の東京海上日動火災保険は、転居を伴う転勤を受け入れた大卒社員(26年卒)の初任給を最大41万円に引き上げました。
他にも三井住友銀行などの大手金融機関やゼネコン各社などが初任給を30万円とするなど、大手企業を中心に幅広い業界で引き上げの動きが出ています。
長く20万円前後で推移し、業界内で横並びだった時代から見ると隔世の感があります。
「売り手市場」によって急激に変化しつつある就職活動。
政府のルールが形骸化する中、学生も企業も新たな環境への対応を迫られています。
参考記事:
3月1日付 読売新聞夕刊1面「就活解禁 学生優位続く 「初任給上げ」好待遇PR」
日経電子版「2026年卒就活が解禁、内定率はや5割 JALは全国3会場で」(2025年3月1日)
日経電子版「就活解禁、でも企業の照準は2年生 インターンも早期化」(2025年3月1日)
日経電子版「清水建設、大卒初任給30万円 ゼネコン大手横並びに」(2025年2月20日)
日経電子版「東京海上の初任給、最大41万円に 転勤同意など条件」(2025年1月10日)
参考資料: