「たばこのない東京五輪」は叶うのか。

  皆さんは食事をするお店を選ぶとき、どのように決めますか。私は「禁煙席かどうか」を優先します。せっかくの美味しいご飯が、たばこの煙で台無しになるのは嫌だからです。「たばこの煙なんて別に気にならない」という人もいるでしょう。以前の投稿(どう変わる?受動喫煙、未来の社会)でも取り上げた、「受動喫煙」について。政治家の世界でも議論は白熱しているようです。

  厚生労働省が昨年10月、飲食店を含む建物内の原則禁煙と喫煙室の設置を認める法整備のたたき台を発表しました。あれから約5ヶ月。2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、政府が検討しているこの法案に対し、与野党を超えた愛煙家が飲食店への規制に反発しています。

  「たばこを吸う人間が横に座った人間のことをどれだけ考えてこなかったか。日本から受動喫煙を一掃するくらいの決意でやってもらいたい」。河野太郎・前国家公安委員長は、自民党厚生労働部会で話しました。「規制強化」を進めたい河野氏が、「分煙派」に訴えたのです。対して、1日40本吸うという岩屋毅・元外務副大臣は「分煙社会を洗練、成熟させるのが正しい方向。さらに強化すれば、地下に潜ってよからぬ勢力がはびこる」と反発しました。

  片山さつき政調会長代理も飲食業への打撃を指摘したうえで、「『経営が成り立たない』と言っているのに、そのままにするのは(厚労行政として)完全に矛盾している」と述べました。飲食店業界の反発が強いのは事実で、そのため、延べ床面積約30平方メートル以下のバーなど小規模店の一部を例外とする案を検討しています。

  業界の反発も背景にあるようです。たばこ生産者や販売者団体から「喫煙機会が減少するのは明らかで、小売店にも大きな影響が出る」「多様性・自主性・経営に全く配慮がない強圧的な規制」という声があがりました。業界からの政治献金も大きく関係しているようです。日本禁煙学会は業界からの政治献金を独自に集計し、ホームページで公表しています。その公表によると、

「収支報告書では、全国たばこ販売政治連盟と全国たばこ耕作者政治連盟の両連盟の年間支出合計は6年で923百万円、年平均は154百万円で、特定される自民党国会議員への年間献金合計は、6年で65百万円、年平均は11百万円、国会議員を含めた自民党への年間献金合計は、6年で105百万円、年平均は18百万円であった」(2010~2015年調査)

  とされています。

  受動喫煙対策強化に向けて、しっかりと議論を進めてほしいものです。何よりも、政治家のたばこに対する「好き・嫌い」や業界との関係で、国民が振り回されるのは良いことではありません。「東京五輪・パラリンピックを機に受動喫煙社会を変える」と決めたのであれば、その目標達成にまい進してほしいものです。

  「個人の選択を奪いかねない」という主張も理解できないわけではありません。ですが、例えば昨年のヒット商品にも選ばれた「IQOS(アイコス)」などのように、周りへの健康被害が少ない電子たばこは許可するなど、柔軟な考えも取り入れながら対策を練るべきではないでしょうか。

  明るい話題であるはずの東京五輪・パラリンピック。たばこ一つで、ここまで議論が沸騰するのは健全な姿とは思えません。一人ひとりが気持ちよく2020年を迎えられるよう、人びとの知恵が今、求められています。

たばこ1

たばこ2

(※写真はイメージです。)

参考記事:

16日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)4面(総合4)「受動喫煙対策煙る永田町 飲食店規制 愛煙家の議員反発」

同日付 読売新聞朝刊(大阪13版)4面(政治)「受動喫煙対策 反対相次ぐ 自民部会 医師会は必要性強調」

参考資料:

日本禁煙学会HP

http://notobacco.jp/seijikenkin/kenkin2010-15.htm (2017年2月16日閲覧)

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